有限会社の社員の権利を行使すべき者の指定方法

(平成9年1月28日最高裁)

事件番号  平成5(オ)1939

 

この裁判では、

有限会社の社員の権利を行使すべき者の指定方法について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

有限会社の持分を相続により準共有するに至った共同相続人が、

準共有社員としての地位に基づいて

社員総会の決議不存在確認の訴えを提起するには、

有限会社法22条、商法203条2項により、

社員の権利を行使すべき者(以下「権利行使者」という)としての指定を受け、

その旨を会社に通知することを要するのであり、

この権利行使者の指定及び通知を欠くときは、

特段の事情がない限り、右の訴えについて

原告適格を有しないものというべきである。

 

そして、この場合に、持分の準共有者間において

権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従い

その過半数をもってこれを決することが

できるものと解するのが相当である。

 

けだし、準共有者の全員が一致しなければ

権利行使者を指定することができないとすると、

準共有者のうちの一人でも反対すれば全員の社員権の行使が

不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、

会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた

右規定の趣旨にも反する結果となるからである。

 

記録によれば、亡Dは、被上告会社らの持分を

すべて所有していたものであり、その法定相続人は、

妻である上告人A1(法定相続分2分の1)と子である

上告人A2及び同A3(同各5分の1)の外、

亡DとBとの間に生まれたE(同10分の1)の4名であるところ、

上告人らは、Eの法定代理人であったBが権利行使者を

指定するための協議に応じないとして、

権利行使者の指定及び通知をすることなく、

被上告会社らの準共有社員としての地位に基づき、

本件各社員総会決議不存在確認の訴えを

提起するに至ったことが明らかである。

 

しかしながら、さきに説示したところからすれば、

BないしEが協議に応じないとしても、

亡Dの相続人間において権利行使者を指定することが不可能ではないし、

権利行使者を指定して届け出た場合に被上告会社らが

その受理を拒絶したとしても、このことにより

会社に対する権利行使は妨げられないものというべきであって、

そもそも、有限会社法22条、商法203条2項による

権利行使者の指定及び通知の手続を履践していない以上、

上告人らに本件各訴えについて原告適格を認める余地はない。

 

その他、本件において、

右の権利行使者の指定及び通知を不要とすべき

特段の事情を認めることもできない。

 

本件各訴えを却下すべきものとした原審の判断は、

以上と同旨をいうものとして是認することができる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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