被害者を利用した殺人
(平成16年1月20日最高裁)
事件番号 平成14(あ)973
この裁判では、自殺させて保険金を取得する目的で
被害者に命令して岸壁上から自動車ごと海中に
転落させた行為について裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
被告人は,事故を装い被害者を自殺させて
多額の保険金を取得する目的で,
自殺させる方法を考案し,それに使用する車等を準備した上,
被告人を極度に畏怖して服従していた被害者に対し,犯行前日に,
漁港の現場で,暴行,脅迫を交えつつ,
直ちに車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し,
猶予を哀願する被害者に翌日に実行することを確約させるなどし,
本件犯行当時,被害者をして,被告人の命令に応じて
車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない
精神状態に陥らせていたものということができる。
被告人は,以上のような精神状態に陥っていた被害者に対して,
本件当日,漁港の岸壁上から車ごと海中に転落するように命じ,
被害者をして,自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に
及ばせたものであるから,被害者に命令して車ごと海に
転落させた被告人の行為は,
殺人罪の実行行為に当たるというべきである。
また,前記のとおり,被害者には被告人の命令に応じて
自殺する気持ちはなかったものであって,
この点は被告人の予期したところに反していたが,
被害者に対し死亡の現実的危険性の高い行為を強いたこと自体については,
被告人において何ら認識に欠けるところはなかったのであるから,
上記の点は,被告人につき殺人罪の故意を否定すべき事情には
ならないというべきである。
・行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本
スポンサードリンク
関連記事