防衛行為の相当性

(平成元年11月13日)

事件番号  昭和61(あ)782

 

Xが路上に駐車していた自動車によって、自車の通行が困難に感じたAが、

Xに対して怒号し、Xがこれに怒り、

「言葉遣いに気をつけろ」といったところ、

Aは、「お前、殴られたいのか。」と言って手拳を前に突き出し、

足を蹴り上げる動作を示されながらXに近づきました。

 

Xが後ずさりするも、Aに追いかけられて目前に迫られたため、

Xはその接近を防ぎ、同人からの危害を免れるため、

やむなく車内にあった菜切包丁を手に取ったうえ腰のあたりに構え、

「切られたいんか。殴れるもんなら、殴ってみい」などと言ったところ、

Aは動じずに「刺せるもんなら、刺してみい」と返しました。

 

この裁判では、Xの行動が防衛手段として、

相当性を超えているかどうかの判断が注目されました。

 

最高裁判所の見解

原判決が、素手で殴打しあるいは足蹴りの動作を

示していたにすぎないAに対し、

Xが殺傷能力のある菜切包丁を構えて脅迫したのは、

防衛手段としての相当性の範囲を逸脱したものであると判断したのは、

刑法三六条一項の「巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為」

の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。

 

すなわち、右の認定事実によれば、Xは、

年齢も若く体力にも優れたAから、

「お前、殴られたいのか。」と言って手拳を前に突き出し、

足を蹴り上げる動作を示されながら近づかれ、

さらに後ずさりするのを追いかけられて目前に迫られたため、

その接近を防ぎ、同人からの危害を免れるため、

やむなく本件菜切包丁を手に取ったうえ腰のあたりに構え、

「切られたいんか。」などと言ったというものであって、

Aからの危害を避けるための

防御的な行動に終始していたものであるから、

その行為をもって防衛手段としての相当性の範囲を

超えたものということはできない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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