競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法35条1項にいう雑所得に当たるか
(平成29年12月15日最高裁)
事件番号 平成28(行ヒ)303
この裁判では、
競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法35条1項にいう
雑所得に当たるかについて裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
所得税法上,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,
退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得で,
営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,
一時所得ではなく雑所得に区分されるところ(34条1項,35条1項),
営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,
文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,
利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して
判断するのが相当である(最高裁平成26年(あ)第948号
同27年3月10日第三小法廷判決・刑集69巻2号434頁参照)。
これを本件についてみると,被上告人は,
予想の確度の高低と予想が的中した際の
配当率の大小の組合せにより定めた
購入パターンに従って馬券を購入することとし,
偶然性の影響を減殺するために,年間を通じて
ほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標として,
年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら,
6年間にわたり,1節当たり数百万円から数千万円,
1年当たり合計3億円から21億円程度となる
多数の馬券を購入し続けたというのである。
このような被上告人の馬券購入の期間,回数,頻度
その他の態様に照らせば,被上告人の上記の一連の行為は,
継続的行為といえるものである。
そして,被上告人は,上記6年間のいずれの年についても
年間を通じての収支で利益を得ていた上,その金額も,
少ない年で約1800万円,多い年では約2億円に
及んでいたというのであるから,
上記のような馬券購入の態様に加え,
このような利益発生の規模,期間その他の状況等に鑑みると,
被上告人は回収率が総体として100%を超えるように
馬券を選別して購入し続けてきたといえるのであって,
そのような被上告人の上記の一連の行為は,
客観的にみて営利を目的とするものであったということができる。
以上によれば,本件所得は,
営利を目的とする継続的行為から生じた所得として,
所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当である。
(2) 所得税法は,雑所得に係る総収入金額から
控除される必要経費について,
雑所得の総収入金額に係る売上原価
その他当該総収入金額を得るため直接に要した
費用の額等とする旨を定めているところ(35条2項2号,37条1項),
本件においては,上記(1)のとおり,被上告人は,
偶然性の影響を減殺するために長期間にわたって
多数の馬券を頻繁に購入することにより,
年間を通じての収支で利益が得られるように
継続的に馬券を購入しており,そのような一連の馬券の購入により
利益を得るためには,外れ馬券の購入は
不可避であったといわざるを得ない。
したがって,本件における外れ馬券の購入代金は,
雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として,
同法37条1項にいう必要経費に当たると解するのが相当である。
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