三陽物産事件(間接差別による賃金格差)

(平成6年6月16日最高裁)

 

Y社は、最低生計量の保障を目的に、

年功的要素を加味した職能資格を基準とした賃金制度を

導入していましたが、その給与規定には、

 

非世帯主及び独身の世帯主には、

所定の本人給を支給しないことがある

との規定がありました。

 

男性従業員には、

実年齢に対応した本人給と一時金が支払われましたが、

女性従業員の多くは、世帯主基準の適用により、

25歳の年齢を想定した賃金設定で本人給が据え置かれることになりました。

 

 

Y社は、労働基準監督署から、世帯主基準の運用に際して、

男女同一賃金に違反する疑いがないように

措置すべきとの指導を受け、勤務地域基準を導入しました。

 

この基準は、家族を有する世帯主の従業員には、

実年齢に応じた本人給を支給、非世帯主又は独身の世帯主であっても、

勤務地域を限定しない従業員については、

同じく実年齢に応じた本人給を支給、

非世帯主及び独身の世帯主で、かつ、

勤務地域を限定して勤務している従業員については、

実年齢が26歳を超えても、26歳相当の本人給を支給する。

というものでした。

この基準に基づき、男子従業員には全員に対し、

実年齢に応じた本人給が支給されていたのに対し、

女子従業員Xら3名(いずれも、非世帯主)には、

26歳相当の本人給が支給されていたため、

Xらは、世帯主基準および勤務地域基準の適用によって

本人給に差をつけることは労基法4条に違反するとして、

実年齢に応じた賃金の支払と、一時金、既払いの賃金との差額、

慰謝料の支払い等を求めて訴えを提起しました。

 

最高裁判所の見解

Y社は、世帯主・非世帯主の基準を絞りながら、実際には、

男子従業員については、非世帯主又は独身の世帯主であっても、

女子従業員とは扱いを異にし、

一環して実年齢に応じた本人給を支給してきており、

また、右基準を判定した際、当時除し従業員のほとんど全員が

非世帯主又は独身の世帯主であること、

将来においても大多数において非世帯主又は

独身の世帯主のいずれかであろうことを

認識していたものと認められる。

 

Y社は、住民票上、女性の大多数が非世帯主又は独身の世帯主に該当する

社会的現実及び被告の従業員構成を認識しながら、

右基準の適用の結果、生じる効果が女子従業員に

一方的に著しい不利益となることを容認して

右基準を制定したものと推測することができ、

本人給が26歳相当の本人給に据え置かれる女子従業員に対し、

女子であることを理由に、賃金を差別したものというべきである。

 

よって、非世帯主及び独身の世帯主の被告従業員に対して、

26歳相当の本人給で据え置くという世帯主、非世帯主の基準は、

労働基準法4条の男女同一賃金の原則に反し無効であるというべきである。

 

Y社が主張するところの、本人の意思で

勤務地域を限定して勤務についている従業員に対して、

26歳相当の本人給で据え置くという勤務地域限定・無限定の基準については、

真に広域配転の可能性があるが故に実年齢による

本人給を支給する趣旨で設けられたものではなく、

女子従業員の本人給が男子従業員のそれより

一方的に低く抑えられる結果となることを容認して制定され

運用されてきたものであることから、労働基準法4条に違反し無効である。

 

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