十和田観光電鉄事件(公民権の行使の保障)
(昭和38年6月21日最高裁)
事件番号 昭和36(オ)1226
旅客運送事業等を営むY社に雇用されていたXは、
Y社の従業員で組織された
労働組合の執行委員長を務めていました。
Xは、Y社の所在する地区の労働組合協議会の幹事会決定により、
昭和34年4月30日施行の
市議会議員選挙の議員候補者として推薦され、
立候補することとなり、Xは、Y社の社長Aに了解を求めたところ、
Aは一応書類を提出するように言い、Xは翌日、
書類を提出して、立候補の届け出をし、
そして、選挙に当選しました。
その後、Xは社長Aに、議員に当選、就任し、
公務就任中は休職の取扱いにしてもらいたいことを
申し出たところ、Aは、Xの所為は、
「従業員が会社の承認を得ずに公職に就任した場合は
懲戒解雇する」旨の就業規則に該当するとして、
Xを懲戒解雇に付しました。
Xは、このような就業規則の規定は労基法7条等に反し無効であり、
懲戒解雇も無効であると主張して訴えを提起しました。
第一審、第二審ともこの懲戒解雇を無効とし
Xが勝訴したため、Yが上告しました。
最高裁判所の見解
懲戒解雇なるものは、普通解雇と異なり、
譴責、減給、降職、出勤停止等とともに、
企業秩序の違反に対し、使用者によって
課せられる一種の制裁罰であると解するのが相当である。
ところで、本件就業規則の前記条項は、従業員が
単に公職に就任したために懲戒解雇するというのではなくして、
使用者の承認を得ないで公職に就任したために
懲戒解雇するという規定ではあるが、それは、
公職の就任を、会社に対する届出事項とするにとどまらず、
使用者の承認にかからしめ、しかもそれに違反した者に対しては
制裁罰としての懲戒解雇を課するものである。
しかし、労働基準法7条が、特に、労働者に対し
労働時間中における公民としての権利の行使および
公の職務の執行を保障していることにかんがみるときは、
公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を
懲戒解雇に附する旨の前記条項は、右労働基準法の規定の趣旨に反し、
無効のものと解すべきである。
従って、所論のごとく公職に就任することが
会社業務の逐行を著しく阻害する虞れのある場合においても、
普通解雇に附するは格別、同条項を適用して
従業員を懲戒解雇に附することは、許されないものといわなければならない。
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