新日本製鐵事件
(平成15年4月18日最高裁)
事件番号 平成11(受)805
Y社がA製鉄所の一定の業務を、
Y社と業務協力会社であるB会社に委託することになり、
Y社はC労働組合と交渉し、同意を得て、
具体的な基準に基づいて、Y社の従業員Xらに
期間3年間のB会社への出向が命じられました。
Y社の就業規則には、
「会社は従業員に対し業務上の必要によって
社外勤務をさせることがある。」という規定があり、また、
Xらの所属するC労働組合とY社の間で締結された労働協約にも、
同様の社外勤務規程があり、C組合の上部組織D連合会とY社の間でも
詳細な規程を含む社外勤務協定が締結されていました。
Xら、出向に同意できない者は不承諾のまま、
出向に従ったうえで、出向の無効確認の訴えを提起しました。
最高裁判所の見解
①本件各出向命令は,Y社が D 製鐵所の構内輸送業務のうち
鉄道輸送部門の一定の業務を協力会社である
株式会社 E 運輸(以下「E 運輸」という。)に業務委託することに伴い,
委託される業務に従事していたXらに
いわゆる在籍出向を命ずるものであること
②Xらの入社時及び本件各出向命令発令時のY社の就業規則には,
「会社は従業員に対し業務上の必要によって
社外勤務をさせることがある。」
という規定があること,
③Xらに適用される労働協約にも
社外勤務条項として同旨の規定があり,
労働協約である社外勤務協定において,
社外勤務の定義,出向期間,出向中の社員の地位,賃金,
退職金,各種の出向手当,昇格・昇給等の査定その他処遇等に関して
出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていること,
という事情がある。
以上のような事情の下においては,Y社は,
Xらに対し,その個別的同意なしに,
Y社の従業員としての地位を維持しながら出向先である
E運輸においてその指揮監督の下に労務を提供することを命ずる
本件各出向命令を発令することができるというべきである。
Y社が構内輸送業務のうち鉄道輸送部門の一定の業務を
E 運輸に委託することとした経営判断が合理性を欠くものとはいえず,
これに伴い,委託される業務に従事していたY社の従業員につき
出向措置を講ずる必要があったということができ,
出向措置の対象となる者の人選基準には合理性があり,
具体的な人選についてもその不当性をうかがわせるような事情はない。
また,本件各出向命令によってXらの労務提供先は変わるものの,
その従事する業務内容や勤務場所には何らの変更はなく,
上記社外勤務協定による出向中の社員の地位,賃金,退職金,各種の
出向手当,昇格・昇給等の査定その他処遇等に関する規定等を勘案すれば,
Xらがその生活関係,労働条件等において
著しい不利益を受けるものとはいえない。
そして,本件各出向命令の発令に至る
手続に不相当な点があるともいえない。
これらの事情にかんがみれば,本件各出向命令が
権利の濫用に当たるということはできない。
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