都南自動車教習所事件(労働協約の成立要件)

(平成13年3月13日最高裁)事件番号  平成12(受)192

 

自動車教習所の経営等を

主たる目的とするY社の従業員Xは、

B労働組合に所属する組合員でした。

(Y社にはこの他C労働組合がありました。)

 

昭和53年以来、Xらは、

毎年のベースアップ(べ・ア)に関しては

Y社と労使交渉を行い、

それに基づいた賃金が支給されていました。

 

平成3年、Y社は、

新しい賃金体系を導入しようとしたところ、

C組合はこれに同意しましたが、B組合は、

初任給に5,000円を加算してべ・アを行う旨には同意しましたが

新しい賃金体系の導入には同意せず、

結局、協定書の作成には至らないまま、

就業規則の改訂により、新賃金体系が導入されました。

 

これによりY社は、

書面作成という法所定の要件を充足しておらず

労働協約としての効力が発生していないことを理由に

B労働組合の組合員にはベ・ア分を支給せず、

C労働組合と、非組合員にのみにベ・ア分を支給をしました。

 

結局、Xらは、平成3年から平成7年までの間、

ベ・ア分の支給を受けず、ベ・ア分については

すでに労使合意が成立しており賃金請求権は発生しているとして、

ベ・ア分の賃金支払いの請求、予備的請求として

同未払は不当労働行為に該当するとして

不法行為による損害賠償の支払いを請求し

訴えを提起しました。

 

一審、原審はXらの請求が認容され、

Y社が上告しました。

 

最高裁判所の見解

労働協約は,利害が複雑に絡み合い対立する労使関係の中で、

関連性を持つ様々な交渉事項につき団体交渉が展開され、

最終的に妥結した事項につき締結されるものであり、

それに包含される労働条件その他の労働者の待遇に関する基準は

労使関係に一定期間安定をもたらす機能を果たすものである。

 

労働組合法は,労働協約にこのような機能があることにかんがみ、

16条において労働協約に定める上記の基準が労働契約の内容を規律する

効力を有することを規定しているほか、

17条において一般的拘束力を規定しているのであり、また、

労働基準法92条は、就業規則が当該事業場について

適用される労働協約に反してはならないこと等を規定している。

 

労働組合法14条が、労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、

又は記名押印することによってその効力を生ずることとしているゆえんは、

労働協約に上記のような法的効力を付与することとしている以上、

その存在及び内容は明確なものでなければならないからである。

 

換言すれば、労働協約は複雑な交渉過程を経て団体交渉が

最終的に妥結した事項につき締結されるものであることから、

口頭による合意又は必要な様式を備えない書面による合意のままでは

後日合意の有無及びその内容につき紛争が生じやすいので、

その履行をめぐる不必要な紛争を防止するために、

団体交渉が最終的に妥結し労働協約として

結実したものであることをその存在形式自体において明示する必要がある。

 

書面に作成され、かつ、両当事者がこれに署名し又は

記名押印しない限り、仮に、労働組合と使用者との間に

労働条件その他に関する合意が成立したとしても、

これに労働協約としての規範的効力を付与することは

できないと解すべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

労働法判例の要点をわかりやすく解説コーナートップへ


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事