公職選挙法10条1項2号の規定の違憲の主張
(平成29年10月31日最高裁)
事件番号 平成29(行ツ)67
この裁判では、
公職選挙法204条の選挙無効訴訟において,選挙人は,
同法205条1項所定の選挙無効の原因として
同法10条1項2号の規定の違憲の主張について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,
民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ,
本件上告理由第1点は,参議院議員の被選挙権を有する
日本国民を年齢満30年以上の者としている
公職選挙法10条1項2号の規定(以下「本件規定」という。)
の違憲をいうが,所論はその前提を欠くものであって,
民訴法312条1項又は2項に規定する事由に該当しない。
すなわち,本件訴訟は,
選挙人が民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)である
公職選挙法204条の選挙無効訴訟として選挙人たる資格で
提起したものであるところ,
同条は,選挙人又は公職の候補者のみが
これを提起し得るものと定め,同法205条1項は,
上記訴訟において主張し得る選挙無効の原因を
「選挙の規定に違反することがあるとき」と定めており,
この無効原因は,主として選挙管理の任にある機関が
選挙の管理執行の手続に関する
明文の規定に違反することがあるとき又は
直接そのような明文の規定は存在しないが
選挙の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく
阻害されるときを指すものと解される
(最高裁昭和27年(オ)第601号同年12月4日
第一小法廷判決・民集6巻11号1103頁,
最高裁昭和51年(行ツ)第49号同年9月30日
第一小法廷判決・民集30巻8号838頁,
最高裁平成26年(行ツ)第96号,
同年(行ヒ)第101号同年7月9日第二小法廷決定・
裁判集民事247号39頁参照)。
このように,同法204条の選挙無効訴訟は,
選挙人らによる公職の候補者に対する投票の結果としての
選挙の効力について,選挙人又は公職の候補者が
上記のような無効原因の存在を主張して争う争訟方法であり,
同法の規定において一定の年齢に達しない者につき
被選挙権を制限していることの憲法適合性については,
当該者が自己の被選挙権の侵害を理由にその救済を求めて
提起する訴訟においてこれを争うことの可否はおくとしても,
同条の選挙無効訴訟において選挙人らが
被選挙権の制限に係る当該規定の違憲を主張して
これを争うことは法律上予定されていないというべきである。
そうすると,選挙人が同条の選挙無効訴訟において
同法205条1項所定の選挙無効の原因として
本件規定の違憲を主張し得るものとはいえない。
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