共産党袴田事件
(昭和63年12月20日最高裁判所)
事件番号 昭和60(オ)4
日本共産党の副委員長も務めたことのある幹部党員のXは、
党規律違反を理由に、党から除名処分を受け、
Xはその時、党所有の家屋に居住していたため、
党が家屋の明け渡し及び賃料相当損害金の支払を求めて提訴しました。
この判例のポイントは、
政党の党員に対する除名処分は
司法審査の対象となるのか?という点です。
裁判所は、
「政党の結社としての自主性にかんがみると、
政党の内部的自律権に属する行為は、
法律に特別の定めのない限り尊重すべき」
「政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名
その他の処分の当否については、
原則として自律的な解決に委ねるのを相当」
「したがって、政党が党員に対してした処分が
一般市民法秩序と直接の関係を有しない
内部的な問題にとどまる限り、
裁判所の審判権は及ばないというべき」
としました。
また、
「他方、右処分が一般市民としての
権利利益を侵害する場合であっても、
右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が
公序良俗に反するなどの
特段の事情のない限り右規範に照らし、
右規範を有しないときは条理に基づき、
適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、
その審理も右の点に限られるものといわなければならない。」
としました。
その上で、
「本件建物の明渡及び賃料相当損害金の
支払を求めるものであるところ、
右請求が司法審査の対象になることはいうまでもない」
が、
「他方、右請求の原因としての除名処分は、
本来、政党の内部規律の問題として
その自治的措置に委ねられるべきものであるから,
その当否については、適正な手続を
履践したか否かの観点から審理判断されなければならない。」
「そして、所論の点に関する原審の事実認定は、
原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、
右事実関係によれば、被上告人(日本共産党)は、
自律的規範として党規約を有し、
本件除名処分は右規約に則ってされたものということができ、
右規約が公序良俗に反するなどの
特段の事情のあることについて主張立証もない本件においては、
その手続には何らの違法もないというべきであるから、
右除名処分は有効であるといわなければならない。」
としました。
ということで、まとめますと、
政党の内部的自律権に属する行為については、
本来的には自律的解決に求めるもので、
「一般市民法秩序と直接の関係を有さない
内部的な問題にとどまる限りは、
裁判所の審判権は及ばない」
ですが、ということは、逆に言うと、
「一般市民法秩序と直接の関係を有するような、
内部的な問題にとどまらない場合」
は、司法審査の対象となります。
(本件はその例)
しかしそのような場合でも、
政党が自律的に定めた規範が
公序良俗に反するようなものでない限りは、
手続き的審査に限定されるもので、
本件は手続きに何らの違法もないというべきで、
右除名処分は有効であるといわなければならない
ということでした。
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