弁護士法第25条第1号違反の訴訟行為の効力

(昭和38年10月30日最高裁)

事件番号  昭和35(オ)924

 

この裁判では、

弁護士法第25条第1号違反の訴訟行為の効力について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

弁護士法25条1号において、

弁護士は相手方の協議を受けて賛助し、

又はその依頼を承諾した事件については、

その職務を行つてはならないと規定している所以のものは、

弁護士がかかる事件につき弁護士としての職務を行うことは、

さきに当該弁護士を信頼して協議又は依頼をした

相手方の信頼を裏切ることになり、そして、

このような行為は弁護士の品位を失墜せしめるものであるから、

かかる事件については弁護士の職務を

行うことを禁止したものと解せられる。

 

従って、弁護士が右禁止規定に違反して職務を行つたときは、

同法所定の懲戒に服すべきはもちろんであるが(同法56条参照)、

かかる事件につき当該弁護士のした訴訟行為の効力については、

同法又は訴訟法上直接の規定がないので、

同条の立法目的に照して解釈により、

これを決定しなければならない。

 

思うに、前記法条は弁護士の品位の保持と当事者の保護とを

目的とするものであることは前述のとおりであるから、

弁護士の遵守すべき職務規定に違背した弁護士をして

懲戒に服せしめることは、固より当然であるが、

単にこれを懲戒の原因とするに止め、

その訴訟行為の効力には何らの影響を及ぼさず、

完全に有効なものとすることは、

同条立法の目的の一である相手方たる

一方の当事者の保護に欠くるものと言わなければならない。

 

従って、同条違反の訴訟行為については、

相手方たる当事者は、これに異議を述べ、

裁判所に対しその行為の排除を求めることが

できるものと解するのが相当である。

 

しかし、他面相手方たる当事者において、

これに同意し又はその違背を知り若しくは

知り得べかりしにかかわらず、何ら異議を述べない場合には、

最早かかる当事者を保護する必要はなく、

却って当該訴訟行為を無効とすることは

訴訟手続の安定と訴訟経済を著しく害することになるのみならず、

当該弁護士を信頼して、これに訴訟行為を委任した

他の一方の当事者をして不測の損害を蒙らしめる結果となる。

 

従って、相手方たる当事者が弁護士に

前記禁止規定違反のあることを知り又は

知り得べかりしにかかわらず何ら異議を述べることなく

訴訟手続を進行せしめ、第二審の口頭弁論を終結せしめたときは、

当該訴訟行為は完全にその効力を生じ、

弁護士法の禁止規定に違反することを理由として、

その無効を主張することは許されないものと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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