権利移転経過の認定について弁論主義違反の違法があるとされた事例

(昭和41年4月12日最高裁)

事件番号  昭和38(オ)350

 

この裁判は、

権利移転経過の認定について

弁論主義違反の違法があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

原審における前記請求に関する当事者の主張は、

上告人において、本件土地(第一審判決別紙記載の土地)は、

上告人の所有であるが、有効な登記原因がないのに

被上告人B1、同B2、同B3、同B4の被相続人である

Dに対し大阪法務局受付昭和29年12月10日

第26,075号をもっていた同年11月28日代物弁済を

原因とする所有権移転登記がなされ、ついで、

被上告人B5に対し同局受付昭和30年12月14日第24、

904号をもってした同年同月同日売買を原因とする

所有権移転登記がなされているから、被上告人らに対し、

それぞれその抹消登記手続を求める旨主張し、被上告人らにおいて、

上告人の本件土地に対する所有権喪失原因として、

右Dは、上告人に対し金65万円を貸与し、

右貸付金に対する停止条件付代物弁済契約の条件成就もしくは

代物弁済予約契約に基づく予約完結の意思表示により

上告人より本件土地の所有権を取得し、

上告人主張のD名義所有権移転登記手続をなした。

 

そして、その後、Dは、Eに対し本件土地を譲渡し、

被上告人B5名義で上告人主張の所有権移転登記手続をなした旨

主張したものであること記録上明らかである。

 

原判決は、その理由において、本件土地が代物弁済により

Dに所有権が移転した旨認定したが、さらに進んで、

上告人は、その後Eより金85万円を借り受けて

Dより本件土地を買い戻し、

Eに対し本件土地を右借入金の売渡担保として譲渡し、

二箇月の期間内に金95万円で買い戻しうる旨約したが、

上告人において右買戻期間を徒過したので、

Eの子供である被上告人B5名義に

所有権移転登記手続がなされたものであって、

上告人は、一旦取り戻した本件土地の所有権を右のようにして

失つたものであるから、上告人の請求は理由がない旨を

判示したものであることは所論のとおりである。

 

しからば、原判決は、上告人において

本件土地をDより買い戻した旨を認定した以上、

上告人が現に本件土地所有権を有しないのは、

上告人よりEへ本件土地を譲渡したという理由によるものであって、

Dが上告人より本件土地を代物弁済により

取得したという理由によるものではないといわなければならない。

 

しかるに、上告人よりEへの本件土地譲渡の事実は、

原審口頭弁論において当事者の主張のない事実であるから、

原判決は、当事者の主張のない事実により

上告人の前記請求を排斥したものというべく、

右の違法は判決に影響があること明らかであるから、

原判決中前記請求関する部分は、

その余の上告理由の当否について判断するまでもなく、

この点において破棄差戻を免れない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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