民訴法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密」

(平成17年10月14日最高裁)

事件番号  平成17(許)11

 

この裁判では、

民訴法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密」について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件文書の記載内容が

「公務員の職務上の秘密」に当たるというためには,

単に非公知の事項であるというだけでなく,

実質的にも秘密として保護するに値すると認められることが必要であり,また,

「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」というためには,

それが公開されることにより公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが

具体的に存在しなければならないと解される

 

本件文書には,本件事業場の安全衛生管理体制,

本件労災事故の発生状況,発生原因等について,

事業者及び労働者らからの聴取内容等の関係証拠に基づき,

本件調査担当者の証拠評価や所見に至る思考過程,再発防止策,

行政指導の措置内容に対する意見,署長判決等が記載されており,

それ自体は性質上外部への公表を予定していない文書と認められる。

 

本件文書のような災害調査復命書が民事訴訟の証拠として使用され,

その記載内容や調査担当者の評価等が争われることになれば,

調査担当者において以後記載する内容や表現を簡素化したり,

意見にわたる部分の記載を控えたりするなどの影響を受けざるを得ず,

上記の目的のための率直な意見の記載が妨げられたり

意思決定の中立性が損なわれるおそれが高いと認められる。

 

また,一般に,労働者や下請業者等の関係者が

労働災害に関する情報を提供した場合に,

情報提供の事実や提供した情報の内容が容易に公開されることになると,

関係者の中には,情報提供により不利益を被った事業者から

報復されることを恐れて,災害調査の場面において

調査担当者の事情聴取に対し不十分な情報提供しか

行わないといった対応をするおそれも否定できないところ,

本件文書の作成に当たって情報の提供をした労働者甲,乙及び丙は,

いずれも,本件文書が本案事件において提出されることには

同意しない旨の意思を示しているのであるから,

その公開によって調査担当者との信頼関係が損なわれ,

ひいては同種災害調査における事業場の安全管理体制や

災害発生原因の特定に関し極めて重要である関係者からの

聴取に支障を来すおそれがあることも認められる。

 

以上によれば,本件文書は,非公知かつ

実質的に秘密として保護するに値する内容が

記載された公務員の職務上の秘密に関する文書で,

その公開により労働災害の発生原因の究明や同種災害の

再発防止策の策定等に著しい支障を来すおそれがあり,

公務の遂行に著しい支障を来すおそれが具体的に存在すると認められるから,

相手方は本件文書の提出を拒むことができる

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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