裁量移送の要件

(平成20年7月18日最高裁)

事件番号  平成20(許)21

 

この裁判では、

地方裁判所にその管轄区域内の

簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され,

被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合における

同申立てを却下する旨の判断と地方裁判所の裁量について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

民訴法16条2項の規定は,

簡易裁判所が少額軽微な民事訴訟について

簡易な手続により迅速に紛争を解決することを

特色とする裁判所であり

(裁判所法33条,民訴法270条参照),

簡易裁判所判事の任命資格が判事のそれよりも緩やかである

(裁判所法42条,44条,45条)ことなどを考慮して,

地方裁判所において審理及び裁判を受けるという

当事者の利益を重視し,地方裁判所に提起された訴訟が

その管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属するものであっても,

地方裁判所が当該事件の事案の内容に照らして

地方裁判所における審理及び裁判が相当と判断したときは

その判断を尊重する趣旨に基づくもので,

自庁処理の相当性の判断は地方裁判所の

合理的な裁量にゆだねられているものと解される

 

そうすると,地方裁判所にその管轄区域内の

簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され,

被告から同簡易裁判所への移送の申立てが

あった場合においても,

当該訴訟を簡易裁判所に移送すべきか否かは,

訴訟の著しい遅滞を避けるためや,

当事者間の衡平を図るという観点(民訴法17条参照)からのみではなく,

同法16条2項の規定の趣旨にかんがみ,

広く当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び

裁判が相当であるかどうかという観点から判断されるべきものであり,

簡易裁判所への移送の申立てを却下する旨の判断は,

自庁処理をする旨の判断と同じく,

地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられており,

裁量の逸脱,濫用と認められる特段の事情がある場合を除き,

違法ということはできないというべきである。

 

このことは,簡易裁判所の管轄が

専属的管轄の合意によって生じた場合であっても

異なるところはない(同法16条2項ただし書)。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事