証明責任の分配

(昭和35年6月10日最高裁)

事件番号  昭和35(あ)436

 

この裁判では、

裁判所が、立証趣旨その他により、

証人が被告人の面前においては

圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めたとき、

刑訴第304条の2により、証人の供述中被告人を退廷させても、

弁護人が終始右証人の尋問に立ち会って主尋問をしており、且つ、

供述終了後被告人を入廷させ、これに証言の要旨を告知して、

その証人を尋問する機会を与え、しかも被告人が右証人に対し

尋問をしている場合に、裁判所の右措置が、

憲法第37条第2項前段に違反しないかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

記録に依れば、A、B及びCはいずれも

本件公訴提起前に都城簡易裁判所において、

被疑者D外2名に対する恐喝、傷害等被疑事件につき、

同裁判所裁判官から証人として尋問を受け、

右証人尋問の際右被疑者ら3名及び弁護人が

これに立ち会っていなかった事実は認められるが、

本件第一審第一回公判期日において被告人D外2名及び弁護人は

右A外2名に対する裁判官の証人尋問調書を証拠とすることに

同意したものであることは記録上明白であるから、

第一審の採証手続には何らの違憲、違法をも認めることはできず

(昭和27年6月18日大法廷判決、集6巻6号800頁参照)、

また記録に依れば、第一審はその第三回公判期日に

証人B及び同Cを尋問するに際し、冒頭に検察官からの

「証人の供述中全被告人を退廷せしめられたい」旨の申出により、

弁護人の「右について意見はない」旨の意見を聴き、

右各証人の供述中全被告人を退廷させる旨決定して

全被告人を退廷させた事実は認められるが、

弁護人は終始右各証人の尋問に立ち会って主尋問をしており、

裁判所は供述終了後全被告人を入廷させ、

これに各証人の証言の要旨を告知し、

証人を尋問する機会を与え、

現に本件被告人Dは右各証人に対し

尋問を行っているものであることは記録上明白である。

 

第一審の右措置は刑訴304条の2の規定に従ったものと認むべく、

右規定はその証人が当該事件の被害者本人たると

その他の第三者たるとにかかわらず適用があり、且つ、

この場合裁判所は立証趣旨その他により

その証人が被告人の面前においては圧迫を受け充分な

供述をすることができないと認めれば

それで足り殊更右の点につき当該証人に発問して

これを確める方法に依ることを必要としないものと解すべく、

本件第一審の右措置が憲法37条2項前段の規定に違反しないことは、

昭和25年3月15日大法廷判決、

集4巻3号355頁の判示するところであって、

論旨は理由がない。

 

同二は違憲をいうけれども、本件の如き場合に控訴審が

事実の取調をするかどうかは裁判所の裁量に属するのであるから、

所論は結局訴訟法違反(審理不尽)の主張に帰し、

同第二点の一及び二は訴訟法違反、第三点は事実誤認、

第四点は量刑不当の主張をいでず、

いずれも刑訴405条の上告理由に当らない

(なお第二点一に主張する如く、第一審が

その第三回公判期日に証人B及び同C両名の共に在廷するところで、

この両名に対する被告人の尋問を行わしめたという事実は

記録上これを認めることができない)

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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