債務整理を依頼された認定司法書士の裁判外の和解
(平成28年6月27日最高裁)
事件番号 平成26(受)1813
この裁判では、
債務整理を依頼された認定司法書士が,
当該債務整理の対象となる債権に係る裁判外の和解について,
司法書士法3条1項7号に規定する額を超えるものとして
代理することができないとされる場合について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
法は,認定司法書士の業務として,簡易裁判所における
民訴法の規定による訴訟手続(以下「簡裁民事訴訟手続」という。)であって,
訴訟の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を
超えないものについて代理すること(法3条1項6号イ),
民事に関する紛争であって簡裁民事訴訟手続の対象となるもののうち,
紛争の目的の価額が上記の額を超えないものについて,
裁判外の和解について代理すること(同項7号)を規定する。
法3条1項6号イが上記のとおり規定するのは,
訴訟の目的の価額が上記の額を超えない比較的少額のものについては,
当事者において簡裁民事訴訟手続の代理を
弁護士に依頼することが困難な場合が少なくないことから,
認定司法書士の専門性を活用して手続の適正かつ円滑な実施を図り,
紛争の解決に資するためであると解される。
そして,一般に,民事に関する紛争においては,
訴訟の提起前などに裁判外の和解が
行われる場合が少なくないことから,
法3条1項7号は,同項6号イの上記趣旨に鑑み,
簡裁民事訴訟手続の代理を認定司法書士に認めたことに付随するものとして,
裁判外の和解についても認定司法書士が代理することを認めたものといえ,
その趣旨からすると,代理することができる民事に関する紛争も,
簡裁民事訴訟手続におけるのと同一の範囲内のものと解すべきである。
また,複数の債権を対象とする債務整理の場合であっても,
通常,債権ごとに争いの内容や解決の方法が異なるし,
最終的には個別の債権の給付を求める訴訟手続が
想定されるといえることなどに照らせば,
裁判外の和解について認定司法書士が代理することができる範囲は,
個別の債権ごとの価額を基準として定められるべきものといえる。
このように,認定司法書士が裁判外の和解について
代理することができる範囲は,
認定司法書士が業務を行う時点において,
委任者や,受任者である認定司法書士との関係だけでなく,
和解の交渉の相手方など第三者との関係でも,
客観的かつ明確な基準によって決められるべきであり,
認定司法書士が債務整理を依頼された場合においても,
裁判外の和解が成立した時点で初めて判明するような,
債務者が弁済計画の変更によって受ける経済的利益の額や,
債権者が必ずしも容易には認識できない,
債務整理の対象となる債権総額等の基準によって
決められるべきではない。
以上によれば,債務整理を依頼された認定司法書士は,
当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が
法3条1項7号に規定する額を超える場合には,
その債権に係る裁判外の和解について
代理することができないと解するのが相当である。
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