被爆者健康手帳交付等請求事件

( 平成29年12月18日最高裁)

事件番号  平成28(行ヒ)404

 

この裁判では、

原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく

被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の

各却下処分の取消しを求める訴訟並びに同取消しに加えて

被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟につき,

訴訟の係属中に申請者が死亡した場合における

訴訟承継の成否について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 被爆者援護法は,被爆者の健康面に着目して公費により

必要な医療の給付をすることを中心とするものであって,

その点からみると,いわゆる社会保障法としての

他の公的医療給付立法と同様の性格を

持つものであるということができるものの,

他方で,原子爆弾の投下の結果として

生じた放射能に起因する健康被害が

他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることに鑑みて

制定されたものであることからすれば,被爆者援護法は,

このような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった国が

自らの責任によりその救済を図るという一面をも有するものであり,

その点では実質的に国家補償的配慮が

制度の根底にあることは否定することができない。

 

そして,同法に基づく健康管理手当は,

原子爆弾の放射能の影響による

造血機能障害等の障害に苦しみ続け,

不安の中で生活している被爆者に対し,

毎月定額の手当を支給することにより,

その健康及び福祉に寄与することを

目的とするものであるところ(同法前文,27条参照),同条は,

その受給権に関し,被爆者であって,

所定の疾病に罹患しているものであれば,

同条2項所定の都道府県知事の認定を受けることによって,

当該認定の申請をした日の属する月の翌月から

一定額の金銭を受給することができる旨を定めている。

 

このような規定に照らすと,同手当に係る受給権は,

所定の各要件を満たすことによって得られる

具体的給付を求める権利として

規定されているということができる。

 

以上のような同法の性格や

健康管理手当の目的及び内容に鑑みると,

同条に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権は,

当該申請をした者の一身に専属する権利ということはできず,

相続の対象となるものであるから,

被爆者健康手帳交付申請及び健康管理手当認定申請の

各却下処分の取消しを求める訴訟並びに同取消しに加えて

被爆者健康手帳の交付の義務付けを求める訴訟について,

訴訟の係属中に申請者が死亡した場合には,

当該訴訟は当該申請者の死亡により

当然に終了するものではなく,

その相続人がこれを承継するものと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事