国家公務員の国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間

(昭和50年2月25日最高裁)

事件番号  昭和48(オ)383

 

この裁判では、

国家公務員の国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

国は、公務員に対し、国が公務遂行のために

設置すべき場所、施設もしくは

器具等の設置管理又は公務員が国もしくは

上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、

公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう

配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を

負っているものと解すべきである。

 

もとより、右の安全配慮義務の具体的内容は、

公務員の職種、地位及び安全配慮義務が

問題となる当該具体的状況等によって

異なるべきものであり、自衛隊員の場合にあっては、

更に当該勤務が通常の作業時、訓練時、防衛出動時(自衛隊法七76条)、

治安出動時(同法78条以下)又は災害派遣時(同法83条)の

いずれにおけるものであるか等によっても

異なりうべきものであるが、国が、

不法行為規範のもとにおいて私人に対しその生命、

健康等を保護すべき義務を負っているほかは、

いかなる場合においても公務員に対し安全配慮義務を負うものではないと

解することはできない

 

会計法30条が金銭の給付を目的とする国の権利及び

国に対する権利につき5年の消滅時効期間を定めたのは、

国の権利義務を早期に決済する必要があるなど

主として行政上の便宜を考慮したことに基づくものであるから、

同条の5年の消滅時効期間の定めは、

右のような行政上の便宜を考慮する必要がある金銭債権であって

他に時効期間につき特別の規定のないものについて

適用されるものと解すべきである。

 

そして、国が、公務員に対する安全配慮義務を懈怠し違法に

公務員の生命、健康等を侵害して損害を受けた公務員に対し

損害賠償の義務を負う事態は、その発生が偶発的であって

多発するものとはいえないから、右義務につき前記のような

行政上の便宜を考慮する必要はなく、また、

国が義務者であっても、

被害者に損害を賠償すべき関係は、

公平の理念に基づき被害者に生じた損害の

公正な填補を目的とする点において、

私人相互間における損害賠償の関係と

その目的性質を異にするものではないから、

国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、

会計法30条所定の5年と解すべきではなく、

民法167条1項により10年と解すべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

行政判例コーナー

行政法の解説コーナー


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事