国民健康保険診療報酬明細書の記録の訂正請求

(平成18年3月10日最高裁)

事件番号  平成13(行ヒ)289

 

この裁判では、

国民健康保険診療報酬明細書の記録の訂正請求について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件条例の定める訂正請求の制度は,基本的に,

本件条例に基づいて開示を受けた自己の

個人情報の内容に事実についての誤りがあると認める者に対し,

その訂正を請求する権利を保障することにより,

市の管理する誤りのある個人情報が利用されることによる

個人の権利利益の侵害を防止することを趣旨目的として

設けられたものと解される。

 

そして,本件条例は,訂正請求があったときは,

実施機関が必要な調査をした上,

当該請求に係る個人情報の訂正をする旨又はしない旨の

決定をしなければならないとしているものの,

実施機関に対してそのために必要な

調査権限を付与する特段の規定を置いておらず,

実施機関の有する対外的な調査権限におのずから

限界があることは明らかである。

 

前記事実関係等によれば,

① 本件レセプトは,国民健康保険法に基づく

療養の給付に関する費用を請求するために,

診療報酬請求書に添付される明細書として,

保険医療機関が自ら行ったとする診療の内容を記載して作成し,

連合会に提出したものであること,

② 連合会による審査の後に本件レセプトを取得した市は,

これに基づき,連合会を通して保険医療機関に対して

診療報酬の支払をしていること,

③ 市においては,

その支払の明細に係る歳入歳出の証拠書類として

本件レセプトを保管しているものであることが認められる。

 

上記の事情を踏まえると,

保険医療機関が自ら行った診療として

本件レセプトに記載した内容が

実際のものと異なることを理由として,

実施機関が本件レセプトに記録された

被上告人の診療に関する情報を誤りのある

個人情報であるとして訂正することは,

保険医療機関が請求した療養の給付に関する費用の内容等を

明らかにするという本件レセプトの文書としての

性格に適さないものというべきである。

 

また,市において,実施機関の収集した個人情報が,

当該実施機関内で個人情報を取り扱う事務の目的を達成するために

必要な範囲内で利用されるものとして管理されることは,

本件条例8条1項の規定に照らして明らかであるところ,

本件レセプトについての上記保管目的からすると,

本件レセプトに記録された被上告人の診療に関する情報は,

本件訂正請求がされた当時,市において被上告人の

実際に受けた診療内容を直接明らかにするために

管理されていたものとは認められず,

被上告人の権利利益に直接係るものということは

困難であると考えられる。

 

そして,実施機関が有する個人情報の訂正を行うための

対外的な調査権限の内容にもかんがみれば,

本件条例は,このような場合にまで,

被上告人の実際に受けた診療内容について

必要な調査を遂げた上で本件レセプトにおける

被上告人の診療に関する情報を訂正することを

要請しているとはいい難いと考えられる

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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