場外車券発売施設設置許可と周辺住民の原告適格

(平成21年10月15日最高裁)

事件番号  平成20(行ヒ)247

 

この裁判では、

場外車券発売施設設置許可と周辺住民の原告適格について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

位置基準は,場外施設が医療施設等から相当の距離を有し,

当該場外施設において車券の発売等の営業が行われた場合に

文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないことを,

その設置許可要件の一つとして定めるものである。

 

場外施設が設置,運営されることに伴う上記の支障は,

基本的には,その周辺に所在する医療施設等を利用する

児童,生徒,患者等の不特定多数者に生じ得るものであって,かつ,

それらの支障を除去することは,

心身共に健康な青少年の育成や公衆衛生の向上及び増進といった

公益的な理念ないし要請と強くかかわるものである。

 

そして,当該場外施設の設置,運営に伴う

上記の支障が著しいものといえるか否かは,

単に個々の医療施設等に着目して判断されるべきものではなく,

当該場外施設の設置予定地及び

その周辺の地域的特性,文教施設の種類・学区やその分布状況,

医療施設の規模・診療科目やその分布状況,当該場外施設が設置,

運営された場合に予想される周辺環境への影響等の事情をも考慮し,

長期的観点に立って総合的に判断されるべき事柄である。

 

規則が,場外施設の設置許可申請書に,敷地の周辺から

1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した

見取図のほか,場外施設を中心とする交通の状況図及び

場外施設の配置図を添付することを義務付けたのも,

このような公益的見地からする総合的判断を行う上での

基礎資料を提出させることにより,上記の判断を

より的確に行うことができるようにするところに

重要な意義があるものと解される。

 

このように,法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは,

第一次的には,上記のような不特定多数者の利益であるところ,

それは,性質上,一般的公益に属する利益であって,

原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。

 

したがって,場外施設の周辺において居住し又は

事業(医療施設等に係る事業を除く。)を

営むにすぎない者や,医療施設等の利用者は,

位置基準を根拠として場外施設の設置許可の

取消しを求める原告適格を有しないものと解される

 

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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