独占禁止法に違反する契約の効力

( 昭和52年6月20日最高裁)

事件番号  昭和48(オ)1113

 

この裁判は、

金銭貸付契約が独禁法19条に違反する場合の、

契約の効力についての裁判所が見解を示しました。

(独禁法違反の法律行為の効力に関する

最高裁判所が初めて見解を示した裁判です。)

 

 

最高裁判所の見解

独禁法19条に違反した契約の私法上の効力については、

その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として、

上告人のいうように同条が強行法規であるからとの理由で

直ちに無効であると解すべきではない。

 

けだし、独禁法は、公正かつ自由な競争経済秩序を

維持していくことによって一般消費者の利益を確保するとともに、

国民経済の民主的で健全な発達を

促進することを目的とするものであり、

同法20条は、専門的機関である公正取引委員会をして、

取引行為につき同法19条違反の

事実の有無及びその違法性の程度を判定し、

その違法状態の具体的かつ妥当な収拾、

排除を図るに適した内容の勧告、差止命令を出すなど

弾力的な措置をとらしめることによって、

同法の目的を達成することを予定しているのであるから、

同法条の趣旨に鑑みると、同法19条に違反する

不公正な取引方法による行為の私法上の効力について

これを直ちに無効とすることは

同法の目的に合致するとはいい難いからである。

 

また、本件のように、前記取引条件のゆえに実質金利が

利息制限法に違反する結果を生ずるとしても、

その違法な結果については後述のように是正されうることを勘案すると、

前記事情のもとでは、本件貸付並びにその取引条件を構成する

本件別口貸付、本件定期預金及び本件むつみ定期預金の各契約は、

いまだ民法90条にいう公序良俗に反するものということはできない。

 

それゆえ、これらの契約を有効とした原審の判断は、

その限りにおいて、正当というべきである。

 

しかし、右取引条件のゆえに実質金利が

利息制限法1条1項所定の利率を超過する結果を生じ、

ひいては遅延損害金の実質的割合も

同法4条1項所定の割合を超過する結果を生じている以上、

右超過部分は、同法の法意に照らし

違法なものとして是正しなければならない。

 

そして、本件取引において実質金利及び

遅延損害金の実質的割合が利息制限法所定の利率及び

割合に違反する結果にならないようにするために、

本件貸付及び本件別口貸付を通じて

貸付利率を一律に是正するとすれば、

計算上本件別口貸付の貸付利率についてはかえって

これを引き上げなければならないこととなって妥当ではないから、

その方法としては、前記各即時両建預金が存在しているため実質金利が

利息制限法に違反する結果を生じていた期間中、

本件貸付契約中利率及び遅延損害金の割合に関する約定の一部が

無効になるものとして是正するのが相当であり、

上告人が支払つた利息のうち実質貸付額550万円を元本として

利息制限法一条一項所定の利率により計算した金額を超過した部分

(なお、前記(4)(イ)の天引利息の実質的な超過部分については、

さらに同法二条に従い計算すべきであることはいうまでもない。)及び

上告人が支払つた遅延損害金のうち同法4条1項所定の割合により

前同様に計算した金額を超過した部分は、

民法488条又は489条により、

本件貸付契約又は本件別口貸付契約の残存元本債務に

充当されたものと解するのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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