薬事法の委任の範囲

(平成25年1月11日最高裁)

事件番号  平成24(行ヒ)279

 

この裁判では、

薬事法の委任の範囲について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

憲法22条1項による保障は,

狭義における職業選択の自由のみならず

職業活動の自由の保障をも包含しているものと解されるところ,

旧薬事法の下では違法とされていなかった

郵便等販売に対する新たな規制は,

郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を

相当程度制約するものであることが明らかである。

 

これらの事情の下で,

厚生労働大臣が制定した郵便等販売を

規制する新施行規則の規定が,

これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に

適合するもの(行政手続法38条1項)であり,

その委任の範囲を逸脱したものではないというためには,

立法過程における議論をもしんしゃくした上で,

新薬事法36条の5及び36条の6を

始めとする新薬事法中の諸規定を見て,

そこから,郵便等販売を規制する内容の省令の制定を

委任する授権の趣旨が,

上記規制の範囲や程度等に応じて

明確に読み取れることを要するものというべきである。

 

新薬事法36条の5及び36条の6は,

いずれもその文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における

販売,授与及び情報提供を対面で行うことを

義務付けていないことはもとより,

その必要性等について明示的に触れているわけでもなく,

医薬品に係る販売又は授与の方法等の制限について

定める新薬事法37条1項も,

郵便等販売が違法とされていなかったことの

明らかな旧薬事法当時から

実質的に改正されていない。

 

また,新薬事法の他の規定中にも,

店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与や

その際の情報提供の方法を原則として

店舗における対面によるものに限るべきであるとか,

郵便等販売を規制すべきであるとの

趣旨を明確に示すものは存在しない。

 

なお,検討部会における議論及び

その成果である検討部会報告書並びに

これらを踏まえた新薬事法に係る法案の国会審議等において,

郵便等販売の安全性に懐疑的な意見が

多く出されたのは上記事実関係等のとおりであるが,

それにもかかわらず郵便等販売に対する

新薬事法の立場は上記のように不分明であり,

その理由が立法過程での議論を含む上記事実関係等からも

全くうかがわれないことからすれば,

そもそも国会が新薬事法を可決するに際して

第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を

禁止すべきであるとの意思を有していたとはいい難い。

 

そうすると,新薬事法の授権の趣旨が,第一類医薬品及び

第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に

禁止する旨の省令の制定までをも委任するものとして,

上記規制の範囲や程度等に応じて明確であると解するのは

困難であるというべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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