行政上の強制徴収と民事訴訟法による強制執行
(昭和41年2月23日最高裁)
事件番号 昭和38(オ)797
この裁判では、
農業共済組合の農作物共済掛金、賦課金および
拠出金の徴収と民事訴訟法上の手続について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
農業共済組合が組合員に対して有するこれら債権について、
法が一般私法上の債権にみられない
特別の取扱いを認めているのは、
農業災害に関する共済事業の公共性に鑑み、
その事業遂行上必要な財源を確保するためには、
農業共済組合が強制加入制のもとにこれに加入する
多数の組合員から収納するこれらの金円につき、
租税に準ずる簡易迅速な行政上の
強制徴収の手段によらしめることが、
もっとも適切かつ妥当であるとしたからにほかならない。
論旨は、農業災害補償法87条の2がこれら債権に
行政上の強制徴収の手段を認めていることは、
これら債権について、一般私法上の債権とひとしく、
民訴法上の強制執行の手段をとることを
排除する趣旨ではないと主張する。
しかし、農業共済組合が、法律上特に
かような独自の強制徴収の手段を与えられながら、
この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、
民訴法上の強制執行の手段によってこれら債権の実現を図ることは、
前示立法の趣旨に反し、公共性の強い
農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、
許されないところといわなければならない。
論旨は、また、農業共済組合連合会がその会員たる
各農業共済組合に対して有する保険料債権に関しては、
法は何ら特別の徴収方法を認めておらず、
したがってその徴収は、民訴法に基づく以外方法がないものとし、
第一審判決を引用する原判決が公法上の金銭債権である
共済掛金等の実現は民訴法に基づく強制執行にわることは
許されない旨判示したのは矛盾であるというが、
この点につき原判決の引用する第一審判決は、
法が特に行政上の強制徴収を認めた債権について、
右の判示をしたものであることその判文上明らかであるから、
所論の非難は当らない。
ちなみに、本件は、農業共済組合連合会が、
その会員たる農共済組合に代位して、
農業共済組合の組合員に対し、右各債権訴求したものであるが、
元来、農業共済組合自体が有しない権能を
農業共済組合連合会が代位行使することは
許されないと解すべきである。
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