課税処分と信義則の適用
(昭和62年10月30日最高裁)
事件番号 昭和60(行ツ)125
この裁判では、
課税処分と信義則の適用について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
青色申告の承認は、
課税手続上及び実体上種々の特典(租税優遇措置)を伴う
特別の青色申告書により申告することのできる法的地位ないし
資格を納税者に付与する設権的処分の
性質を有することが明らかである。
そのうえ、所得税法は、税務署長が
青色申告の承認申請を却下するについては申請者につき
一定の事実がある場合に限られるものとし(145条)、かつ、
みなし承認の規定を設け(147条)、
同法所定の要件を具備する納税者が
青色申告の承認申請書を提出するならば、
遅滞なく青色申告の承認を受けられる仕組みを設けている。
このような制度のもとにおいては、
たとえ納税者が青色申告の承認を受けていた
被相続人の営む事業にその生前から従事し、
右事業を継承した場合であっても、
青色申告の承認申請書を提出せず、
税務署長の承認を受けていないときは、
納税者が青色申告書を提出したからといって、
その申告に青色申告としての効力を
認める余地はないものといわなければならない。
租税法規に適合する課税処分について、
法の一般原理である信義則の法理の適用により、
右課税処分を違法なものとして
取り消すことができる場合があるとしても、
法律による行政の原理なかんずく
租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、
右法理の適用については慎重でなければならず、
租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を
犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて
納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような
特別の事情が存する場合に、
初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。
そして、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、
少なくとも、税務官庁が納税者に対し
信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、
納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、
のちに右表示に反する課税処分が行われ、
そのために納税者が経済的不利益を
受けることになったものであるかどうか、また、
納税者が税務官庁の右表示を信頼し
その信頼に基づいて行動したことについて
納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は
不可欠のものであるといわなければならない。
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