都市計画と公害防止計画

(平成11年11月25日最高裁)

事件番号  平成8(行ツ)76

 

この裁判では、

都市計画事業認可処分等の取消訴訟と

事業地周辺地域の居住者等の原告適格について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

事業地の周辺地域に居住し又は

通勤、通学するにとどまる者については、

認可等によりその権利若しくは

法律上保護された利益が侵害され又は

必然的に侵害されるおそれがあると解すべき根拠はない。

 

すなわち、法の目的を定める法1条、

都市計画の基本理念を定める法2条、

都市計画の基準を定める法13条、

認可等の基準を定める法61条等の規定をみても、

法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、

健康で文化的な都市生活及び機能的な

都市活動を確保するなどの公益的見地から、

都市計画施設の整備に関する事業の認可等を

規制することとしていると解されるのであって、

これらの規定を通して事業地周辺に居住する住民等

個々人の個別的利益を保護しようとする趣旨を

含むものと解することはできない。

 

法13条1項柱書き後段が当該都市について

公害防止計画が定められているときは都市計画は

当該公害防止計画に適合したものでなければならないとしているのも、

都市計画が健康で文化的な都市生活を確保することを

基本理念とすべきであること等にかんがみ、

都市計画がその妨げとならないようにするための規定であって、

やはり専ら公益的観点から設けられたものと解すべきである。

 

また、法は、公聴会を開催するなどして

住民の意見を都市計画の案の作成に反映させることとし

(法16条1項)、都市計画の案について

住民に意見書提出の機会を与えることとしている(法17条2項)が、

これらの規定も、都市計画に住民の意見を広く反映させて、

その実効性を高めるという公益目的の規定と解されるのであって、

これをもって住民の個別的利益を

保護する趣旨を含む規定ということはできない。

 

そうすると、本件各処分に係る事業地の周辺地域に居住し又は

通勤、通学しているが事業地内の

不動産につき権利を有しない上告人らは、

本件各処分の取消しを求める

原告適格を有しないというべきである。

 

都市計画法施行法2条によれば、旧都市計画法

(大正8年法律第36号。以下「旧法」という。)の下で

適法、有効に決定された都市計画は、

改めて法の規定する手続、基準に従って決定し直さないでも、

そのまま法に基づいて適法、

有効に決定された都市計画と認められ、

法の都市計画に関する規定が適用されることになると解される。

 

したがって、旧法の下で適法、

有効に決定された都市計画において

定められた都市施設を整備する事業を行う場合には、

施行者は直ちに当該事業の認可等の申請を行えば足り、

その要件とされる法61条1号の適用においても、

事業の内容が旧法下で決定された

都市計画に適合していれば足りると解すべきである。

 

そうすると、旧法の下においては都市計画の基準として

公害防止計画に適合することを

要するとはされていなかったのであるから、

旧法の下において決定された環状6号線整備計画は、

その後に定められた公害防止計画に適合するか否かにかかわらず、

現行法下においてもそのまま適法、

有効な都市計画とみなされるものというべきであり、

右整備計画に適合するものとしてされた

環状6号線道路拡幅事業の認可に違法はない。

 

法13条1項柱書き後段は、前記のとおり、

都市計画が公害防止計画の妨げとならないようにすることを

規定したものと解される。

 

そして、公害防止計画とは、

「当該地域において実施されるべき

公害の防止に関する施策に係る計画」のことをいうのである

(公害対策基本法(昭和42年法律第132号)19条1項)から、

そこで執ることとされている施策を妨げるものであれば、

都市計画は当該公害防止計画に適合しないことになるが、

法13条1項柱書き後段が右施策と無関係に公害を

増大させないことを都市計画の基準として

定めていると解することはできない

 

そして、原審の適法に確定した事実関係の下においては、

中央環状新宿線建設計画が本件公害防止計画の執ることとしている

施策の妨げとなるものでないことは明らかであるから、

右建設計画は、本件公害防止計画に適合するというべきであり、

法13条1項柱書き後段に違反しない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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