リラックス法学部 >憲法判例>憲法判例 堀木訴訟(生存権と憲法14条)の概要と判決の趣旨をわかりやすく解説
わかりやすい憲法判例 堀木訴訟(生存権と憲法14条)
(最判昭和57年7月7日)
事件番号 昭和51(行ツ)30
この判例は最高裁のとる
憲法25条の違憲審査基準を示した判決として
重要な意義を有していると考えられています。
Xさんは、全盲の視力障がいがあり、
国民年金法に基づく障害年金を
受給していました。
夫と離婚し、お子さんを養育しており、
児童扶養手当法に基いて、
児童扶養手当の受給資格の認定を
県知事に申請しましたが、
児童扶養手当制度には、
手当と公的年金の併給禁止の規定があり、
知事はこの請求を却下しました。
Xさんはこの処分を不服として
訴えを提起しました。
Xさんの主張は、
「児童扶養手当の実質的権利者は児童であり、
親が障害福祉年金を受けているという理由で
児童を受給対象者から除外するのは
不合理な差別である」
というものです。
例えば、父が障害福祉年金を受給し、
健康な母が児童を養育している場合は、
障害福祉年金と児童扶養手当を
供給できるので、
Xさんのケースで児童扶養手当を
受給できないというのは、
不合理な差別であるとして、
この併給禁止の規定は
憲法13条、14条、25条に違反するものとして
争いました。
第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
公共の福祉に反しない限り、
立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、
人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、
政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第二十五条 すべて国民は、
健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、
社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び
増進に努めなければならない。
最高裁は、
「憲法25条の『健康で文化的な最低限度の生活』とは、
きわめて抽象的・相対的な概念であり、
立法による具体化が必要であり、
具体的な立法措置を講ずるかの選択決定は、
立法府の広い裁量に委ねられている。
そして併給禁止の平等違反についても
広汎な立法裁量を前提として判断すると、
差別は不合理なものとは言えない」としました。
また、最高裁は
「併給調整条項の適用により、
障害福祉年金を受けることができる地位にある者と、
そうでない者に児童扶養手当の受給に関して
差別を生ずることになっても、併給調整条項の合理性に加えて、
身体障害者、母子に対する諸施設及び、
生活保護制度の存在に照らして総合的に判断すると、
この差別がなんら合理的のない
不当なものであるとはいえない」
としました。
判例の結論としては、
感情的に解せないものがありますが、
ここは冷静に裁判所の示した25条の
とらえ方をおさえておきましょう。
この裁判でも「朝日訴訟」と同様に、
生存権についてプログラム規定説に近い考え方を
採用したものと評価されています。
朝日訴訟、生存権のとらえ方の学説については以下をご参照ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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