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森林法共有林事件(財産権に対する制限)
(最判昭和62年4月22日)
事件番号 昭和59(オ)805
父から生前贈与を受け、
兄と山林を2分の1ずつ共有していたミスターXは、
兄に共有山林の分割請求をしましたが、
当時の森林法186条の規定により、
共有山林の分割請求が認めらませんでした。
(分割請求とは、例えば100㎡の土地を
2人で共有していたとしたら、
「50㎡ずつ単独所有の状態しようよ」
というような請求するという具合です。
土地は細かくしていくとその用途が限られ、
どんどん利用価値も減少していくので、
森林法にこのような分割を制限する規定がありました)
ミスターXは、この規定が
憲法29条に違反するとして争いました。
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、
公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、こ
れを公共のために用ひることができる。
最高裁は、財産権について
「財産権は、立法府が社会全体の利益を
図るために加える規制により
制約を受けることがある」としました。
また、違憲審査の基準について、
規制目的が公共の福祉に
合致しないことが明らかであるか、
または規制手段がこの目的を
達成するための手段として必要若しくは
合理性に欠けていることが明らかである場合に限り、
憲法29条2項に違背するものとして、
その効力を否定することができるとしました。
森林法186条の規定は、
森林の細分化を防ぎ、森林経営の安定をはかり、
ひいては森林の保続培養と生産力の増進をはかり、
もって国民経済の発展に資するという立法目的でした。
最高裁はこの立法目的について、
公共の福祉に合致しないことが明らかとは言えないが、
規制手段については、
立法目的との関係において、
合理性と必要性のいずれも肯定することができないことが
明らかであるとして、
森林法186条は憲法29条2項に違反し、
無効であるとしました。
本判決は立法目的との関係において、
厳格な合理性の基準によったものと解されています。
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