自治体の借入金受領行為と民法第110条(表面代理)の類推適用

(昭和34年7月14日最高裁)

事件番号  昭和30(オ)873

 

この裁判では、

村長(自治体)の借入金受領行為と

民法第110条(表面代理)の類推適用について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

普通地方公共団体の現金の出納事務は

当該普通地方公共団体の収入役の専権に属し、

普通地方公共団体の長においては収入及び支出を命令し

並びに会計を監督する権限を有するも、

現金を出納する権限を有しなかったことは、

改正前地方自治法の規定に照らし明らかである。

 

従って前示50万円の金員を前示村長において

借受けてその交付を受けたが、

同村収入役が右金円を受領したことについては

何等主張立証のないこと第一審判決の判示の如くである以上、

上告町の前主村と被上告組合の前主組合との間には

右50万円についての消費貸借は

成立するに至らなかったものと判断した

第一審判決は正当である。

 

そしてまた、普通地方公共団体の長自身が

他よりの借入金を現実に受領した場合は、

民法110条所定の

「代理人がその権限を超えて権限外の行為をなした場合」

に該当するものとして、同条の類推適用を認めるのが相当であり、

この点に関する第一審判決は是認できる。

 

しかし、前叙の如く村の現金の出納事務は該村収入役の専権に属し、

村長はその権限を有しないことが法令の規定上明らかである以上、

第一審判決が、たんに冒頭掲記のような事実を判示しただけで、

何等特殊の事情の存在を判示することなく、

たやすく、被上告組合の前主組合は、

上告町の前主村の村長が前示金員を受領する権限ありと信じたことにつき

正当な理由があると判断し民法110条を類推適用して

上告町の前主村の責任を認めたことは失当である。

 

 

 全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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