内縁不当破棄と不法行為

(昭和33年4月11日最高裁)

事件番号  昭和32(オ)21

 

この裁判では、

内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し

不法行為を理由として損害の賠償を求めることができるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

大審院は、いわゆる内縁を

「将来ニ於テ適法ナル婚姻ヲ為スベキコトヲ目的トスル契約」

すなわち婚姻の予約であるとし、当事者の一方が正当の理由なく、

約に違反して婚姻をすることを拒絶した場合には、

其の一方は相手方に対し、婚姻予約不履行による

損害賠償の義務を負う旨判示し

(大審院大正2年(オ)第621号、同4年1月26日民事連合部判決、民事判決録49頁)、

爾来裁判所は、内縁を不当に破棄した者の責任を

婚姻予約不履行の理論によつて処理し来り、当裁判所においても、

この理論を踏襲した判例の存することは、

論旨の指摘するとおりである。

 

ところで、いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、

法律上の婚姻ということはできないが、

男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては、

婚姻関係と異るものではなく、

これを婚姻に準ずる関係というを妨げない

 

そして民法709条にいう「権利」は、

厳密な意味で権利と云えなくても、

法律上保護せらるべき利益があれば足りるとされるのであり、

内縁も保護せられるべき生活関係に外ならないのであるから、

内縁が正当の理由なく破棄された場合には、

故意又は過失により権利が侵害されたものとして、

不法行為の責任を肯定することができるのである。

 

されば、内縁を不当に破棄された者は、

相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として

損害賠償を求めることができるとともに、

不法行為を理由として損害賠償を求めることも

できるものといわなければならない

 

本件において、原審は、上告人の行為は所論の如く

不法行為を構成するものと認めたものであるが、

上記説明に徴すれば、これをもって違法とすることはできない。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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