夫婦の同居、夫婦間の協力扶助に関する処分の審判についての規定の合憲性

(昭和40年6月30日最高裁)

事件番号  昭和36(ク)419

 

この裁判では、

夫婦の同居、夫婦間の協力扶助に関する処分の

審判の規定の合憲性について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

憲法82条は「裁判の対審及び判決は、

公開法廷でこれを行ふ」旨規定する。

そして如何なる事項を公開の法廷における対審及び

判決によって裁判すべきかについて、

憲法は何ら規定を設けていない。

 

しかし、法律上の実体的権利義務自体につき争があり、

これを確定するには、公開の法廷における

対審及び判決によるべきものと解する。

 

けだし、法律上の実体的権利義務自体を

確定することが固有の司法権の主たる作用であり、

かかる争訟を非訟事件手続または審判事件手続により、

決定の形式を以て裁判することは、

前記憲法の規定を回避することになり、

立法を以てしても許されざるところであると解すべきであるからである。

 

家事審判法9条1項乙類は、

夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する事件を

婚姻費用の分担、財産分与、扶養、遺産分割等の事件と共に、

審判事項として審判手続により審判の形式を以て

裁判すべき旨規定している。

 

その趣旨とするところは、夫婦同居の義務その他

前記の親族法、相続法上の権利義務は、

多分に倫理的、道義的な要素を含む身分関係のものであるから、

一般訴訟事件の如く当事者の対立抗争の形式による

弁論主義によることを避け、先ず当事者の協議により

解決せしめるため調停を試み、調停不成立の場合に

審判手続に移し、非公開にて審理を進め、職権を以て

事実の探知及び必要な証拠調を行わしめるなど、

訴訟事件に比し簡易迅速に処理せしめることとし、

更に決定の一種である審判の形式により裁判せしめることが、

かかる身分関係の事件の処理として

ふさわしいと考えたものであると解する。

 

しかし、前記同居義務等は多分に倫理的、

道義的な要素を含むとはいえ、

法律上の実体的権利義務であることは

否定できないところであるから、

かかる権利義務自体を終局的に確定するには

公開の法廷における対審及び判決によって

為すべきものと解せられる

(旧人事訴訟手続法〔家事審判法施行法による

改正前のもの〕1条1項参照)。

 

従って前記の審判は夫婦同居の義務等の

実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、

これら実体的権利義務の存することを前提として、

例えば夫婦の同居についていえば、

その同居の時期、場所、態様等について

具体的内容を定める処分であり、また必要に応じて

これに基づき給付を命ずる処分であると解するのが相当である。

 

けだし、民法は同居の時期、場所、態様について

一定の基準を規定していないのであるから、

家庭裁判所が後見的立場から、合目的の見地に立って、

裁量権を行使してその具体的内容を形成することが必要であり、

かかる裁判こそは、本質的に非訟事件の裁判であって、

公開の法廷における対審及び判決によって

為すことを要しないものであるからである。

 

すなわち、家事審判法による審判は形成的効力を有し、また、

これに基づき給付を命じた場合には、

執行力ある債務名義と同一の効力を有するものであることは

同法15条の明定するところであるが、

同法25条3項の調停に代わる審判が確定した場合には、

これに確定判決と同一の効力を

認めているところより考察するときは、

その他の審判については確定判決と

同一の効力を認めない立法の趣旨と解せられる。

 

然りとすれば、審判確定後は、

審判の形成的効力については

争いえないところであるが、

その前提たる同居義務等自体については

公開の法廷における対審及び判決を求める途が

閉ざされているわけではない

 

従って、同法の審判に関する規定は何ら

憲法82条、32条に牴触するものとはいい難く、また、

これに従つて為した原決定にも違憲の廉はない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

民法判例(親族・相続)をわかりやすく解説


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