幼児引渡の請求

(昭和35年3月15日最高裁)

事件番号  昭和32(オ)1166

 

この裁判では、

いわゆる幼児引渡の請求と、

憲法第22条所定の居住移転の自由について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

被上告人の本件請求は、

被上告人の親権に服する子Dに対し、

被上告人がその親権を行使するにつき、

上告人の妨害の排除を求むるに在ること明かである。

 

同点一所論の如く、本件請求の目的が、

右Dの養育に在るのではなくして、

亡夫Eの遺産を取得するにあるとの事実は、

原判示に即しないばかりでなく、

同点一に列挙した諸事実の如きは、

本件請求の当否に関係があるとは到底解し得られない。

 

同点二所論の事実も亦、

必ずしも原審の事実認定に即するとはいえないばかりでなく、

かかる事実は、いまだ被上告人に

親権濫用のある理由とするに足らない。

 

また、同点三についても、原判示によれば、

右Dは昭和22年5月10日生であり、

父E死亡直後、被上告人が上告人に対し、

右Dの引渡を求むる調停を申立てた昭和25年2月14日には、

いまだ3才に満たない幼児であり、上告人は

その頃より引続き右Dを手許におき、或は実姉Hに託して

養育を続けて来たとのことであるから、

上告人或はその実姉H方に留ったことが、

右Dの自由意思に基いたものとは、到底解し得ない。

 

論旨は、原判決に右Dの居住の自由を侵し

憲法22条違反があると主張する。

 

本件請求は、右Dに対し、民法821条に基く居所指定権により、

その居所を定めることを求めるものではなくして、

被上告人が同人に対する親権を行使するにつき、

これを妨害することの排除を、

上告人に対し求めるものであること、

多言を要しない所である

 

したがって、本件請求を認容する判決によって、

被上告人の親権行使に対する妨害が排除せられるとしても、

右Dに対し、被上告人の支配下に入ることを強制し得るものではない。

 

それは、同人が自ら居所を定める意思能力を有すると

否とに関係のない事項であって、

憲法22条所定の居住移転の自由とも亦何等関係がない。

されば違憲の主張は、その前提を欠くに帰する。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

民法判例(親族・相続)をわかりやすく解説


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