民法714条1項の監督義務者としての義務

(平成27年6月1日最高裁)

事件番号  平成26(受)2344

 

この裁判は、

責任を弁識する能力のない未成年者が,

サッカーボールを蹴って他人に損害を加えた場合において,

その親権者が民法714条1項の監督義務者としての義務を

怠らなかったとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば,満11歳の男子児童であるCが

本件ゴールに向けてサッカーボールを蹴ったことは,

ボールが本件道路に転がり出る可能性があり,

本件道路を通行する第三者との関係では

危険性を有する行為であったということができるものではあるが,

Cは,友人らと共に,放課後,児童らのために

開放されていた本件校庭において,

使用可能な状態で設置されていた本件ゴールに向けて

フリーキックの練習をしていたのであり,

このようなCの行為自体は,本件ゴールの

後方に本件道路があることを考慮に入れても,

本件校庭の日常的な使用方法として通常の行為である。

 

また,本件ゴールにはゴールネットが張られ,

その後方約10mの場所には本件校庭の南端に沿って

南門及びネットフェンスが設置され,これらと本件道路との間には

幅約1.8mの側溝があったのであり,

本件ゴールに向けてボールを蹴ったとしても,

ボールが本件道路上に出ることが常態であったものとはみられない。

 

本件事故は,Cが本件ゴールに向けてサッカーボールを蹴ったところ,

ボールが南門の門扉の上を越えて南門の前に架けられた橋の上を転がり,

本件道路上に出たことにより,折から同所を進行していたBが

これを避けようとして生じたものであって,Cが,

殊更に本件道路に向けてボールを

蹴ったなどの事情もうかがわれない。

 

責任能力のない未成年者の親権者は,

その直接的な監視下にない子の行動について,

人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から

指導監督する義務があると解されるが,

本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,

上記各事実に照らすと,通常は人身に危険が

及ぶような行為であるとはいえない。

 

また,親権者の直接的な監視下にない子の

行動についての日頃の指導監督は,

ある程度一般的なものとならざるを得ないから,

通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によって

たまたま人身に損害を生じさせた場合は,

当該行為について具体的に予見可能であるなど

特別の事情が認められない限り,

子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。

 

Cの父母である上告人らは,危険な行為に及ばないよう日頃から

Cに通常のしつけをしていたというのであり,

Cの本件における行為について具体的に

予見可能であったなどの特別の事情があったこともうかがわれない。

 

そうすると,本件の事実関係に照らせば,

上告人らは,民法714条1項の監督義務者としての

義務を怠らなかったというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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