法律行為が公序に反することを目的とするものであるかどうかを判断する基準時
(平成15年4月18日最高裁)
事件番号 平成11(受)1519
この裁判では、
法律行為が公序に反することを目的とするものであるかどうかを
判断する基準時について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
法律行為が公序に反することを目的と
するものであるとして無効になるかどうかは,
法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである。
けだし,民事上の法律行為の効力は,
特別の規定がない限り,行為当時の法令に照らして
判定すべきものであるが,この理は,
公序が法律行為の後に変化した場合においても
同様に考えるべきであり,法律行為の後の経緯によって
公序の内容が変化した場合であっても,
行為時に有効であった法律行為が無効になったり,
無効であった法律行為が有効になったりすることは
相当でないからである。
そこで,本件保証契約についてこれを検討する。
平成3年法律第96号による改正前の証券取引法は,
損失保証や特別の利益提供(以下「損失保証等」という。)を
違法な行為としていたものの,その違反に対しては,
その行為をした証券会社や外務員に対し,証券業の免許の取消し,
業務の停止,外務員の登録の取消し等の
行政処分が科せられることとされていたにすぎず,
学説の多くも損失保証等を内容とする契約は
私法上有効であると解していたのであって,
損失保証等が反社会性の強い行為であるとまで
明確に認識されてはいなかった。
しかし,平成元年11月に,証券会社が特定の顧客に
損失補てんをしたことが大きな社会問題となり,
これを契機として,同年12月には,
大蔵省証券局長通達が発せられ,
また,G協会も同通達を受けて同協会の規則を改正し,
事後的な損失補てんを慎むよう求めるとともに,
損失保証等が法令上の禁止行為であることにつき改めて
注意が喚起されるに至った。
このような過程を通じて,次第に,
損失保証等が,証券取引の公正を害し,
社会的に強い非難に値する行為であることの認識が
形成されていったものとみることができる。
本件保証契約が締結されたのは,
昭和60年6月14日であるが,
上記の経緯にかんがみると,この当時において,既に,
損失保証等が証券取引秩序において許容されない
反社会性の強い行為であるとの社会的認識が
存在していたものとみることは困難であるというべきである。
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