種類債権の特定
(昭和30年10月18日最高裁)
事件番号 昭和28(オ)1267
民法第401条第2項の
「債務者ガ物ノ給付ヲ為スニ
必要ナル行為を完了シタルトキ」
について裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
原審は、先ず本件売買契約が当初から
特定物を目的としたものかどうか明らかでないと判示したが、
売買の目的物の性質、数量等から見れば、
特段の事情の認められない本件では、
不特定物の売買が行われたものと認めるのが相当である。
そして右売買契約から生じた買主たる被上告人の債権が、
通常の種類債権であるのか、制限種類債権であるのかも、
本件においては確定を要する事柄であって、
例えば通常の種類債権であるとすれば、
特別の事情のない限り、原審の認定した如き
履行不能ということは起らない筈であり、
これに反して、制限種類債権であるとするならば、
履行不能となりうる代りには、
目的物の良否は普通問題とはならないのであって、
被上告人が「品質が悪いといって引取りに行かなかった」とすれば、
被上告人は受領遅滞の責を
免れないこととなるかもしれないのである。
すなわち本件においては、当初の契約の内容のいかんを
更に探究するを要するといわなければならない。
つぎに原審は、本件目的物は
いずれにしても特定した旨判示したが、
如何なる事実を以て
「債務者ガ物ノ給付ヲ為スニ必要ナル行為ヲ完了シ」
たものとするのか、原判文からはこれを窺うことができない。
論旨も指摘する如く、本件目的物中未引渡の部分につき、
上告人が言語上の提供をしたからと云って、
物の給付を為すに必要な行為を
完了したことにならないことは明らかであろう。
従って本件の目的物が叙上
いずれの種類債権に属するとしても、
原判示事実によってはいまだ特定したとは云えない筋合であって、
上告人が目的物につき善良なる管理者の
注意義務を負うに至ったとした原審の判断も
また誤りであるといわなければならない。
要するに、本件については、なお審理判断を要すべき、
多くの点が存するのであって、原判決は審理不尽、
理由不備の違法があるものと云うべく、
その他の論旨について判断するまでもなく
論旨は結局理由があり、原判決は破棄を免れない。
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