過失相殺と身体的特徴の斟酌
(平成8年10月29日最高裁)
事件番号 平成5(オ)875
この裁判では、
過失相殺と身体的特徴の斟酌について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
被害者が平均的な体格ないし通常の体質と
異なる身体的特徴を有していたとしても、
それが疾患に当たらない場合には、
特段の事情の存しない限り、
被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり
斟酌することはできないと解すべきである。
けだし、人の体格ないし体質は、
すべての人が均一同質なものということはできないものであり、
極端な肥満など通常人の平均値から
著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、
転倒などにより重大な傷害を被りかねないことから
日常生活において通常人に比べてより
慎重な行動をとることが求められるような場合は格別、
その程度に至らない身体的特徴は、
個々人の個体差の範囲として当然に
その存在が予定されているものというべきだからである。
これを本件についてみるに、
上告人の身体的特徴は首が
長くこれに伴う多少の頸椎不安定症があるということであり、
これが疾患に当たらないことはもちろん、
このような身体的特徴を有する者が
一般的に負傷しやすいものとして慎重な行動を
要請されているといった事情は認められないから、
前記特段の事情が存するということはできず、
右身体的特徴と本件事故による加害行為とが
競合して上告人の右傷害が発生し、
又は右身体的特徴が被害者の損害の拡大に
寄与していたとしても、これを損害賠償の額を定めるに当たり
斟酌するのは相当でない。
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