遺産確認の訴えの適法性

(昭和61年3月13日最高裁)

事件番号  昭和57(オ)184

 

この裁判では、

共同相続人間において特定の財産が

被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えの

適法性について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

共同相続人間において、

共同相続人の範囲及び各法定相続分の割合については

実質的な争いがなく、ある財産が

被相続人の遺産に属するか否かについて争いのある場合、

当該財産が被相続人の遺産に属することの確定を求めて当該財産につき

自己の法定相続分に応じた共有持分を

有することの確認を求める訴えを提起することは、

もとより許されるものであり、通常はこれによって

原告の目的は達しうるところであるが、

右訴えにおける原告勝訴の確定判決は、

原告が当該財産につき右共有持分を有することを既判力をもって

確定するにとどまり、その取得原因が

被相続人からの相続であることまで

確定するものでないことはいうまでもなく、

右確定判決に従つて当該財産を遺産分割の対象としてされた

遺産分割の審判が確定しても、

審判における遺産帰属性の判断は既判力を有しない結果、

のちの民事訴訟における裁判により

当該財産の遺産帰属性が否定され、

ひいては右審判も効力を失うこととなる余地があり、それでは、

遺産分割の前提問題として遺産に属するか否かの争いに

決着をつけようとした原告の意図に

必ずしもそぐわないこととなる一方、

争いのある財産の遺産帰属性さえ確定されれば、

遺産分割の手続が進められ、当該財産についても改めて

その帰属が決められることになるのであるから、

当該財産について各共同相続人が

有する共有持分の割合を確定することは、

さほど意味があるものとは考えられないところである。

 

これに対し、遺産確認の訴えは、

右のような共有持分の割合は問題にせず、

端的に、当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、

換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の

共有関係にあることの確認を求める訴えであって、

その原告勝訴の確定判決は、当該財産が

遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、

したがって、これに続く遺産分割審判の手続において

及びその審判の確定後に当該財産の

遺産帰属性を争うことを許さず、もって、

原告の前記意思によりかなった紛争の解決を

図ることができるところであるから、

かかる訴えは適法というべきである。

 

もとより、共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、

基本的には民法249条以下に規定する

共有と性質を異にするものではないが、

共同所有の関係を解消するためにとるべき裁判手続は、

前者では遺産分割審判であり、

後者では共有物分割訴訟であって、

それによる所有権取得の効力も相違するというように

制度上の差異があることは否定しえず、

その差異から生じる必要性のために遺産確認の訴えを認めることは、

分割前の遺産の共有が民法249条以下に規定する共有と基本的に

共同所有の性質を同じくすることと矛盾するものではない。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

民法判例(親族・相続)をわかりやすく解説


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