預金債権の帰属
(平成15年2月21日最高裁)
事件番号 平成11(受)1172
この裁判は、
損害保険代理店が保険契約者から収受した
保険料のみを入金する目的で開設した普通預金口座の預金債権が
損害保険会社にではなく損害保険代理店に帰属するとされた事例です。
最高裁判所の見解
金融機関である上告人との間で普通預金契約を締結して
本件預金口座を開設したのは,訴外会社である。
また,本件預金口座の名義である
「B火災海上保険㈱代理店D建設工業㈱F」が
預金者として訴外会社ではなく被上告人を
表示しているものとは認められないし,
被上告人が訴外会社に上告人との間での
普通預金契約締結の代理権を授与していた事情は,
記録上全くうかがわれない。
そして,本件預金口座の通帳及び届出印は,
訴外会社が保管しており,本件預金口座への
入金及び本件預金口座からの払戻し事務を行っていたのは,
訴外会社のみであるから,本件預金口座の管理者は,
名実ともに訴外会社であるというべきである。
さらに,受任者が委任契約によって委任者から
代理権を授与されている場合,
受任者が受け取った物の所有権は
当然に委任者に移転するが,金銭については,
占有と所有とが結合しているため,
金銭の所有権は常に金銭の受領者(占有者)である受任者に
帰属し,受任者は同額の金銭を委任者に
支払うべき義務を負うことになるにすぎない。
そうすると,被上告人の代理人である訴外会社が
保険契約者から収受した保険料の所有権は
いったん訴外会社に帰属し,訴外会社は,
同額の金銭を被上告人に送金する義務を
負担することになるのであって,被上告人は,
訴外会社が上告人から払戻しを
受けた金銭の送金を受けることによって,
初めて保険料に相当する金銭の所有権を
取得するに至るというべきである。
したがって,本件預金の原資は,
訴外会社が所有していた金銭にほかならない。
したがって,本件事実関係の下においては,
本件預金債権は,被上告人にではなく,
訴外会社に帰属するというべきである。
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