不法行為による損害賠償判例「雲右衛門事件」「大学湯事件」

をわかりやすく解説します。

 

民法709条は、

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、

これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

と規定していますが、

「他人の権利」の考え方として重要な判例が、

「雲右衛門事件」「大学湯事件」です。

 

雲右衛門事件

雲右衛門事件(大審院大正3年7月4日判決)は、

桃中軒雲右衛門(とうちゅうけんくもえもん)の浪曲を

X会社がレコードに入れて販売したのを、

Yが権限なしに複製販売したので、

Xが著作権侵害を理由に、

Yに損害賠償請求したという事件です。

 

大審院は。

「浪曲のような低級音楽、瞬間創作のようなものには

著作権はなく、したがって、

浪曲は権利として保護されない」

としてXの賠償請求を否定しました。

 

この判例で重要なポイントは、

【著作権法上の著作権がなければ

不法行為法の保護を受けられない】

とし、民法709条の権利を

法律上確立しているものに限ったことを示した点です。

(浪曲は、「低級音楽、瞬間創作で著作物ではない」

と判断されたところも、重要なポイントではありますが、

今回のポイントは「不法行為の損害賠償」なので、

こちらの件はおいておきます(笑))

 

 

大学湯事件

大学湯事件(大審院大正14年11月28日判決)は、

雲右衛門事件から踏襲されてきた、

709条の「権利」のとらえ方を変更した画期的な判決です。

 

XはYから「大学湯」という老舗を買い取り、

風呂場の建物を賃借して、

大学近辺で風呂屋を営業していましたが、

 

賃貸借契約を合意解除し、

Yが新たな賃貸人に「大学湯」を営業させました。

これに対してXは、「大学湯」の老舗を失ったとして、

損害賠償を請求したという事件です。

 

原審は、「老舗」は権利ではないとしましたが、

大審院では、民法709条の権利の概念を広く解し

「吾人の法律観念上其の侵害に対し

不法行為に基く救済を与ふることを必要とすと思惟する一の利益」

と、破棄差戻しの判決を行いました。

 

大審院のこの解釈は、

雲右衛門事件以降の権利の解釈からの転機となり、

民法709条の権利を極めて広く解釈する方向を確立させた

画期的なものと評価されています。

 

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