リラックス法学部 > 初学者の部屋 > 動産の物権変動(4つの引渡し方法)

 

動産の物権変動(4つの引渡し方法)

まず「動産」とは、

民法で次のように定義されています。

 

(定義)

第八十五条  この法律において「物」とは、有体物をいう。

(不動産及び動産)

第八十六条  土地及びその定着物は、不動産とする。

2  不動産以外の物は、すべて動産とする。

3  無記名債権は、動産とみなす。

 

「土地及びその定着物」は

土地と建物とお考えください。

つまり、土地と建物以外の有体物は

動産なのだとお考えください。

(人間は物ではないので動産ではないですよ)

 

「無記名債権」とは、

持ち主の名前が記載されていない

債権ということですが、

コンサートのチケットや

新幹線の乗車券などだとお考えください。

 

これら動産に関する物権を

他人に移すには4つの方法があります。

物権の代表格所有権で説明いたします。

 

例えばストラマーさんのギターの所有権を

シムノンさんに移す方法は

4つあります。

 

①現実の引渡し

こちらは文字通り

ストラマーさんが持っているギターを

シムノンさんに手渡しするというものです。

 

②簡易の引渡し

こちらはすでにストラマ-さんが

シムノンさんにギターを貸していて、

シムノンさんの手元にギターがある状態で、

ストラマーさんが

「あのギターあげるよ」というものです。

 

③占有改定

こちらはストラマーさんの手元にギターがあり、

シムノンさんにギターをプレゼントする旨を伝えて、

そのうえで、

「とりあえず君のためにオレが預かっておくよ」

というものです。

 

④指図による占有移転

こちらはストラマーさんが

ジョーンズさんにギターを貸していて、

「あのギターシムノンにあげたから、

シムノンのために預かってて」

と伝え、シムノンさんがその状態を

「了解。よろしく」といった状態です。

注意が必要なのは

預かっているジョーンズさんの「了解」ではなく

シムノンさんの「了解。ジョーンズ預かっててね」

という承諾が必要という点です。

 

こういった4つの物権の引渡し方法があります。

以下条文でこれをどう表現しているか掲載しますので、

「これがこの人を指していて、

この意味は具体的にはこういう事か」

と例文と照らしあわせて

法律の表現方法に触れてみてください。

 

 

(現実の引渡し及び簡易の引渡し)

第百八十二条  

占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。

 

2  譲受人又はその代理人が

現に占有物を所持する場合には、

占有権の譲渡は、

当事者の意思表示のみによってすることができる。

 

(占有改定)

第百八十三条  代理人が自己の占有物を

以後本人のために占有する意思を表示したときは、

本人は、これによって占有権を取得する。

 

(指図による占有移転)

第百八十四条  代理人によって占有をする場合において、

本人がその代理人に対して

以後第三者のためにその物を占有することを命じ

その第三者がこれを承諾したときは、

その第三者は、占有権を取得する。

 

 

そしてこれら4つの引渡しがどんな意味合いになるかというと、

「物権変動の対抗要件」というものになります。

 

例えば、ストラマーさんが1つのギターを

シムノンさん、ヒードンさん2人に別々に

「あげるよ」と言ったとします。

(こういう同じものを複数人にあげたり、

売ったりすることを「二重譲渡」といいます)

 

前回お話した通り、

1つの物に同一の物権は1つしか成立しませんから、

どちらかが所有権を取得し、

どちらかが所有権を取得できないことになります。

この勝ち負けは、

4つの引渡しのどれかを先にした方で決まります。

 

先に4つのどれかを経た方が他人に

「これはオレのモノだ」と主張できることになります。

 

このような状態を「対抗できる」といい、

その要件を「対抗要件」といいます。

 

ということで今回は引渡しと

「動産」についての対抗要件でしたが、

不動産になると話が変わってきます。

 

不動産の対抗要件についてはまた別の回で詳しく説明いたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

民法をわかりやすく解説した初学者の部屋トップへ

試験対策・要点まとめコーナートップへ


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事