民法145条は、

時効は、当事者が援用しなければ

裁判所がこれによって裁判をすることができない。

としています。

 

「当事者が援用しなければ」

としていますので、

仮に裁判で、提出された資料等から

時効が成立していることが明らかな場合でも、

当事者が時効を主張しなければ、

裁判所が時効が成立しているという判断をできない

ということになります。

 

また、民法146条は、

時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

としています。

(この条項は強行法規ですから、

契約書に時効の利益をあらかじめ放棄する旨が記載されていても、

その条項は無効となります。)

 

「あらかじめ」としていますので、

時効完成後に時効の利益を放棄することはできます。

 

完成した時効を放棄した後に、

また時効に必要な期間が経過した場合は、

また時効が完成します。

 

そして、また時効の利益を放棄することもできます。

 

そしてまた時間が経過すれば時効が完成…

 

とエンドレスに繰り返されますが、

「私は今後、何度時効が完成しようが、

絶対に時効を主張しない」

と、あらかじめ放棄することはできません。

 

そもそも

「あらかじめ時効を放棄したい人などいるのか?」

と思うかもしれませんが、契約者でウカツにそういう約束を

してしまうこともあるのです。

 

お金を借りる際は、金融業者に差し出された

契約書に署名・押印することになるのが一般的ですが、

借りる側の方が立場が弱いので、契約書の内容に

ケチをつけれる状況じゃないのが普通です。

 

そういった状況ですと、

「消滅時効をあらかじめ放棄する」

旨のことを書かれていても

それをのまざるを得なくなってしまいます。

 

このような事を阻止するために、民法は

時効の利益をあらかじめ放棄することができないとして、

ひとつの歯止めを作ったわけです。

 

 

時効を援用できる者

試験対策としておさえておきたいのは、

【「当事者」とは、どこまでの者が対象となるのか?】

というところです。

 

判例は、時効を援用できる「当事者」は、

時効により直接の利益を受ける者に限られる

としています。

 

判例で時効を援用できる者とされたのは次の者です。

・保証人

 

・物上保証人

 

・抵当不動産の第三取得者

 

・売買予約の仮登記に後れる抵当権者

 

(売買予約の完結権の消滅時効に対して)

・売買予約の仮登記に後れる不動産の第三取得者

(売買予約の完結権の消滅時効に対して)

 

・詐害行為の受益者

(詐害行為取消権を行使している者の

債権の消滅時効に対して)

 

判例で時効を援用できない者とされたのは次の者です。

・後順位抵当権者

(先順位の抵当権の被担保債権に対して)

 

・建物の賃借人

(賃貸人の土地(その賃貸建物のある土地)の

取得時効について)

 

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