民法709条と製造物責任法についてわかりやすく解説します。
民法709条は、
故意又は過失によって他人の権利又は
法律上保護される利益を侵害した者は、
これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
と規定しています。
まず、民法709条で責任を追及する場合、
加害者に「故意または過失」があることが要件であることを
頭に入れておいてください。
製造物責任法(PL法)は、
1条にその目的が掲げられています。
製造物の欠陥により人の生命、身体又は
財産に係る被害が生じた場合における
製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、
被害者の保護を図り、もって国民生活の
安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
製造物責任法(PL法)は、
製造物の欠陥により損害が生じた場合の
製造業者等の損害賠償責任について定めた法規で、
損害賠償責任について規定されています。
製造物責任法(PL法)により責任を追及する場合、
「欠陥」があることが要件となっています。
言い方を変えると、
「欠陥」を証明できれば、
故意又は過失を立証しなくても、
責任を追及できるということです。
この法律は、民法709条を排除するものではなく、
製造物の欠陥により損害を被った者は、
民法709条、製造物責任法いずれを根拠にしても、
加害者に対して責任追及をすることができます。
たとえば、民法709条で追及する場合、
加害者の故意、過失を証明する必要がありますが、
製造物責任法では欠陥を証明すれば
責任追及をすることができますので、
いずれか証明しやすい方(証明できる方)で
責任を追及するということができます。
反面、製造物責任法は、責任追及できる期間が
民法709条よりも短いため、
この期間が経過してしまっている場合は、
民法709条の方で責任を追及する
ということもできるというわけです。
製造物責任法(PL法)の「欠陥」とは
製造物責任法(PL法)の「欠陥」とは、
「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、
その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期
その他の当該製造物に係る事情を考慮して、
当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」
と定義されています。
「瑕疵」と近いニュアンスですが、
安全性と無関係な品質や性能の瑕疵は、
「欠陥」にはあたりません。
「欠陥がある」ということは「過失がある」とも
言えそうですので、
「欠陥」と「過失」が質的にどれぐらい違うのか
というところは正直難しいところではありますが、
実務家にとっては、欠陥を証明する方がやりやすく、
より、消費者に有利な認定がされることが期待されます。
欠陥はどの段階で存在していないとならないかということですが、
「引き渡しの時(出荷時)」に存在していなければならないと
されています。
「製造物」とは
「製造物」とは、製造又は加工された動産
と定義されています。
不動産や、ソフトウェアなどの無体物は
「製造物」に含まれないことになりますが、
ソフトウェアに欠陥があった場合に、
それを組み込んだ製造物の欠陥と評価されることは
ありえます。
「加工された」といっているので、
加工されていない農産物、畜産物、水産物などは、
ここでいう製造物にはあたらないことになりますが、
「加工」にあてはまる範囲は広く、
調理されたものは「加工」されたものとなりますし、
化学肥料を用いて生育を管理された農産物や、
養殖地で抗生物質などを使用して育成された魚なども
生産物に含まれうると解されています。
「製造業者等」とは
「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者と定義されています。
一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(「製造業者」)
二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、
商標その他の表示(「氏名等の表示」)をした者又は
当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は
販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物に
その実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
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