リラックス法学部 >民事訴訟法・民事執行法・民事保全法をわかりやすく解説 >民事保全法 仮差押えと仮処分の違い
保全命令には仮差押えと仮処分がありますが、
今回はその違いについて説明していきます。
まず、仮差押は
金銭債権を目的としたものです。
(仮差押命令の必要性)
第二十条 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、
強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、
又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
条件付き又は期限付きの債権を
被保全債権とすることもできます。
2 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は
期限付である場合においても、これを発することができる。
このように、仮差押をする場合はそもそも「お金で解決する争い」を
しているという事なので、債務者がお金をつめば仮差押を
解放するという仕組みがあり、裁判所は必ず、債務者が
いくらお金をつめば仮差押から解放されるのか、
その額を決めなければなりません。
そのお金を「仮差押解放金」といいます。
(仮差押解放金)
第二十二条 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、
又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が
供託すべき金銭の額を定めなければならない。
2 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は
保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
一方、仮処分はどんな場合に
発動されるかといいますと、
条文を見てみましょう。
(仮処分命令の必要性等)
第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、
債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、
又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに
発することができる。
2 仮の地位を定める仮処分命令は、
争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は
急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
要するに、不動産などの特定物の得喪について
争っている場合で、
必ずしもお金で解決できないような場合です。
仮差押解放金のように、
仮処分解放金というものもありますが、
こちらは裁判所は定めることが
「できる」という規定になっています。
しかも債権者の意見を聞く必要があります。
(仮処分解放金)
第二十五条 裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもって
その行使の目的を達することができるものであるときに限り、
債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、
又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために
債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。
という事で、仮差押は「お金で解決できる場合」
仮処分は「お金で解決できない場合(できる場合もあるが)」
と認識していただければと思います。
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