「若返り」療法の効果がなかった場合の損害賠償(説明義務違反)

(平成27年7月8日大阪地裁)

 

医療センターを開設するYは、

皮膚のしわ、たるみ等を除去・改善する美容療法を実施し、

口腔内から採取した細胞を培養し、

これを対象部位に注入するa療法

より高濃度の細胞を注入するb療法を実施し、

ホームページに広告していました。

 

Xは、Yのホームページを見て、

初めて本件医療センターを訪れ、

当時の同センター院長のA医師からカウンセリングを受け、

Xは、b療法を受けることに同意し、

当日、血液検査のための採血を受け、

約1カ月後に本件医療センターにおいて、

A医師により口腔内から歯肉を切除されたうえ、

培養細胞の元となる細胞を採取され、

患者自身の血清を治療基本部位に注入する術前措置を受けました。

 

その後、A医師により3回にわたり、施術を受けましたが

3回目の施術を受ける際に、

A医師に治療効果が感じられない旨を訴えたところ、

A医師は「6カ月ほど待てば効果が現れる」などと述べました。

 

しかし、約6カ月が経過しても、

Xは効果を感じることができず、

家族からはむしろしわが深くなった箇所も

あるなどと言われました。

 

XはYに対して、債務不履行または不法行為に基づいて

損害賠償として治療費等約356万円を請求しました。

 

大阪地裁の見解

 

「美容診療を受けることを決定した者とすれば、

医師から特段の説明のない限り、主観的な満足度はともかく、

客観的には当該美容診療に基づく効果が

得られるものと考えているのが通常というべきである。

 

そうすると、仮に、当該美容診療を実施したとしても、

その効果が客観的に現れることが必ずしも確実ではなく、

場合によっては客観的な効果が得られないこともあるというのであれば、

医師は、当該美容診療を実施するに当たり、

その旨の情報を正しく提供して適切な説明をすることが

診療契約に付随する法的義務として要求されているというべきである。

 

したがって、医師が、上記のような説明をすることなく、

美容診療を実施することは、診療対象者の期待および

合理的意思に反する診療行為に該当するものとして、

説明義務違反に基づく不法行為ないし債務不履行責任を免れない。」

 

として、裁判所は、Yの説明義務違反を認め、

不法行為に該当するとして、

約203万円の損害賠償(施術費用相当額約134万円、基礎化粧品代約9万円、

慰謝料30万円、弁護士費用30万円)を認容しました。

(なお、逸失利益は否定しました。)

 

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