リラックス法学部 >刑法をわかりやすく解説 >窃盗罪の構成要件、判例をわかりやすく解説

 

窃盗罪は刑法235条に規定があります。

 

第235条

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、

10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

財物とは?

窃盗罪とは、他人の「財物」を窃取する罪です。

 

まず、何が「財物」に当たるかという点です。

 

「財物」は財産的価値を有することが必要ですが、

必ずしも交換価値がなければいけないというわけでは

ありません。

 

主観的価値のあるもの、消極的価値のあるものも

財物となります。

 

思い出の写真や手紙、ラブレターなど、

売り物にはならないけれども本人にとっては

価値のあるものも財物となります。

 

また、情報やデータはそれ自体は財物ではなく、

機密データをメールなどを転送しても

「窃盗」にはなりません。

 

データが入った記憶媒体は財物となり、

パソコンや情報が記載された紙を窃取すると、

窃盗となります。

 

なお、刑法245条が電気は財物とみなす

と規定しています。

 

窃盗罪の保護法益

窃盗罪の保護法益については、

争いがあります。

 

所持説、本権説という考え方がありますが、

判例の考え方は、

事実としての所持が窃盗罪の保護法益であるという

所持説となっています。

 

ですから財物を所持している者に本権があるかどうかに

関わらず、その財物を窃取すると窃盗罪となります。

 

つまり、この考え方によりますと、窃盗の被害者が、

犯人に奪われた財物を取り戻す行為も、

犯人の「事実としての所持」を侵害し、

窃盗罪が成立するという理屈になります。

 

本権説は、

保護法益を所有権その他の本権とする考え方ですが

この立場で考えますと、

犯人には保護されるべき本権がないため、

被害者が取り戻す行為は、

窃盗罪とはならないということになります。

 

なお、判例は「事実上の所持」

を保護法益としていますので、

法律上、所有権が認められない麻薬を

窃取する行為についても、

窃盗罪が成立することになります。

 

 

不法領得の意思

判例は窃盗罪が成立する主観的要件として、

「不法領得の意思」を要するとしています。

 

不法領得の意思とは、

「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として

その経済的用法に従い利用、処分する意思」

をいいます。

 

他人の自転車(チャリ)を、

使った後で元に戻すつもりで、

ちょっと拝借するという例は、

「使用窃盗」として

不可罰となった判例があります。

 

他人の物を自己の所有物として利用、処分する意思が

欠けているという事です。

 

なお、一時使用した後に乗り捨てるつもりで

自転車(チャリ)を持ち去った場合は、

使用窃盗とはいえず、

窃盗罪が成立します。

 

他人の自動車(くるま)を元に戻すつもりで数時間、

完全に自己の支配下の置く意図のもと

無断使用した場合は、元に戻すつもりであっても

窃盗罪が成立した判例があります。

 

他人の家に侵入し、

飾ってあったフィギュアを破壊した場合は

器物損壊罪となり、窃盗罪とはなりませんが、

フィギュアを持ち出して自分の家の飾ってから破壊した場合は、

窃盗罪となります。

 

前者と後者の違いは

「経済的用法に従い利用、処分する意思」

の有無という事です。

 

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