リラックス法学部 > 初学者の部屋 > 第11話  制限行為能力者の相手方の催告権

  

制限行為能力者のした法律行為に対する取消し、

追認、法定追認などを

これまで説明してまいりました。

 

さて、今度は制限行為能力者と取引した

相手方の立場で考えてみたいと思います。

 

取消しのできる法律行為は一応有効で、

取消権者が取消権を行使すれば

その行為ははじめから無効に、

取消権者が追認すれば、

その行為ははじめから有効になる

というものでした。

 

取消権者すなわち、

未成年者や成年被後見人、

被保佐人、被補助人に主導権があって、

取消したり、追認して完全に有効にしたり

ということですが、相手方にしてみれば

非常に不安定な立場ですよね。

 

そこで、相手方には

「取消しするか追認するか決めてくれ」

という権利、

「催告権」があります。

 

民法の第20条をご覧ください。

(制限行為能力者の相手方の催告権)

第二十条  

制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、

被保佐人及び第十七条第一項の審判を

受けた被補助人をいう。以下同じ。)

相手方はその制限行為能力者が行為能力者

(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)

となった後、

その者に対し、

一箇月以上の期間を定めて

その期間内にその取り消すことができる行為を

追認するかどうかを確答すべき旨の

催告をすることができる。

この場合において、

その者がその期間内に確答を発しないときは、

その行為を追認したものとみなす。

 

このように、制限行為能力者が

制限行為能力者でなくなってから

一ヶ月以上の期間を定めて、

催告をし、返答がなかった場合には

追認したものとみなすという規定があります。

 

それでは、制限行為能力者が

制限行為能力者のままである時の催告は

できるのでしょうか?

 

同条2項をご覧ください。

 

2  制限行為能力者の相手方が、

制限行為能力者が行為能力者とならない間に、

その法定代理人、保佐人又は補助人に対し

その権限内の行為について

前項に規定する催告をした場合において、

これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、

同項後段と同様とする。

 

要するに制限行為能力者の保護者に催告をし、

返答なければ同様に、追認したものとなります。

 

さらに、レベルアップして複雑になりますが

余裕があればついてきてください。

 

 

同条4項を見てみましょう。

4  制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は

第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、

第一項の期間内にその保佐人又は補助人の

追認を得るべき旨の催告をすることができる。

この場合において、

その被保佐人又は被補助人が

その期間内にその追認を得た旨の

通知を発しないときは、

その行為を取り消したものとみなす。

 

被保佐人、被補助人に対して、

「保護者の同意をもらってこい」

という催告をして、

音沙汰がなければ、取り消したものとみなす

 

という規定になっています。

 

この「保護者の同意をもらってこい」

という催告ができるのは、

被保佐人、被補助人のみ

であることにご注意ください。

 

被保佐人、被補助人は

判断能力の衰えが小さいために

このようなことができます。

 

成年被後見人、

未成年者に対してこの催告をしても

法律上の効力は何も発生しませんので

ご注意ください。

 

また、この際に追加でご紹介しますと、

制限行為能力者が自分が

行為能力者であるというふうに欺いた場合は

その法律行為は制限行為能力を理由に

取り消す事はできなくなりますので、

ご注意ください。

(人を欺けるほど賢いなら

法律上保護する必要がない)

 

(制限行為能力者の詐術)

第二十一条  

制限行為能力者が行為能力者であることを

信じさせるため詐術を用いたときは、

その行為を取り消すことができない。

 

という事で、今回は制限行為能力者の相手方の催告権について説明してまいりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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