交通事故による損害賠償債務についての一部の弁済の提供及び供託が有効であるか

(平成6年7月18日最高裁)

事件番号  平成3(オ)1311

 

この裁判では、

交通事故による損害賠償債務についての

一部の弁済の提供及び供託が有効であるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

交通事故の加害者が被害者から損害の賠償を

求める訴訟を提起された場合において、

加害者は右事故についての事実関係に基づいて

損害額を算定した判決が確定して初めて

自己の負担する客観的な債務の全額を知るものであるから、

加害者が第一審判決によって支払を

命じられた損害賠償金の全額を提供し、

供託してもなお、右提供に係る部分について

遅滞の責めを免れることができず、

右供託に係る部分について

債務を免れることができないと解するのは、

加害者に対し難きを強いることになる。

 

他方、被害者は、右提供に係る金員を自己の請求する

損害賠償債権の一部の弁済として受領し、

右供託に係る金員を同様に一部の弁済として受領する旨留保して

還付を受けることができ、そうすることによって

何ら不利益を受けるものではない。

 

以上の点を考慮すると、

右提供及び供託を有効とすることは

債権債務関係に立つ当事者間の公平に

かなうものというべきである。

 

したがって、交通事故によって被った

損害の賠償を求める訴訟の控訴審係属中に、

加害者が被害者に対し、第一審判決によって支払を命じられた

損害賠償金の全額を任意に弁済のため提供した場合には、

その提供額が損害賠償債務の全額に満たないことが

控訴審における審理判断の結果判明したときであっても、

原則としてその弁済の提供はその範囲において有効なものであり、

被害者においてその受領を拒絶したことを理由にされた

弁済のための供託もまた有効なものと解するのが相当である。

 

この理は、加害者との間で加害車両を被保険自動車として

任意の自動車保険契約を締結している保険会社が

被害者からいわゆる直接請求権に基づき

保険金の支払を求める訴訟を提起された場合に、

保険会社が被害者に対してする弁済の提供及び供託についても、

異なるところはない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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