代々木事件(共同運行供用者)

(昭和50年11月4日最高裁)

事件番号  昭和49(オ)1035

 

この裁判では、

会社の取締役が私用のため会社所有の自動車を使用し

同乗の従業員に一時運転させている間に

右従業員の惹起した事故により受傷した場合に

会社に対し自動車損害賠償保障法3条にいう

他人であることを主張して損害賠償を請求することができるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

自賠法3条により自動車保有者が損害賠償責任を負うのは、

その自動車の運行によって

「他人」の生命又は身体を害したときであり、

ここに「他人」とは、自己のために自動車を運行の用に供する者及び

当該自動車の運転者を除くそれ以外の者をいうことは、

当裁判所の判例の趣旨とするところである

(最高裁昭和35年(オ)第1428号

同37年12月14日第二小法廷判決・

民集16巻12号2407頁、昭和42年(オ)

第88号同42年9月29日第二小法廷判決・

裁判集民事88号629頁、昭和44年(オ)

第722号同47年5月30日第三小法廷判決・

民集26巻4号898頁)。

 

したがって、被上告会社がDに対し自賠法3条による

賠償責任を負うかどうかを判断するためには、

Dが右の意味における「他人」にあたるかどうかを

検討することが必要である

 

そうして、原審確定の上記の事実関係に徴すると、

Dは被上告会社の業務終了後の深夜に本件自動車を業務とは

無関係の私用のためみずからが運転者となりこれに

Eを同乗させて数時間にわたつて運転したのであり、

本件事故当時の運転者はEであるが、この点も、

Dが被上告会社の従業員である

Eに運転を命じたという関係ではなく、

Dみずからが運転中に接触事故を起こしたために、

たまたま運転を交代したというにすぎない、

というのであって、この事実よりすれば、

Dは、本件事故当時、本件自動車の運行をみずから支配し、

これを私用に供しつつ利益をも享受していたものといわざるをえない。

 

もっとも、原審認定の被上告会社による

本件自動車の管理の態様や、

Dの被上告会社における地位・身分等をしんしゃくすると、

Dによる本件自動車の運行は、必ずしも、

その所有者たる被上告会社による運行支配を

全面的に排除してされたと解し難いことは、

原判決の説示するとおりであるが、そうであるからといって、

Dの運行供用者たる地位が否定される理由はなく、

かえって、被上告会社による運行支配が

間接的、潜在的、抽象的であるのに対し、

Dによるそれは、はるかに直接的、顕在的、

具体的であるとさえ解されるのである。

 

それゆえ、本件事故の被害者であるDは、

他面、本件事故当時において本件自動車を

自己のために運行の用に供していた者であり、

被害者が加害自動車の運行供用者又は

運転者以外の者であるが故に「他人」にあたるとされた

当裁判所の前記判例の場合とは事案を異にするうえ、

原判示のとおり被上告会社もまたその運行供用者

であるというべきものとしても、

その具体的運行に対する支配の程度態様において

被害者たるDのそれが直接的、顕在的、具体的である本件においては、

Dは被上告会社に対し自賠法3条の「他人」であることを

主張することは許されないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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