同乗者に対する安全配慮義務違反の成否
(昭和58年5月27日最高裁)
事件番号 昭和55(オ)579
この裁判では、
自衛隊の自動車の運転者が
運転上の注意義務を怠ったことにより生じた
同乗者の死亡事故と国の右同乗者に対する
安全配慮義務違反の成否について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
国は、公務員に対し、
国が公務遂行のために設置すべき場所、施設若しくは
器具等の設置管理又は公務員が国若しくは
上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって、
公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき
義務を負っている(最高裁昭和48年(オ)第383号同50年2月25日
第三小法廷判決・民集29巻2号143頁)。
右義務は、国が公務遂行に当たって支配管理する人的及び
物的環境から生じうべき危険の防止について
信義則上負担するものであるから、
国は、自衛隊員を自衛隊車両に公務の遂行として乗車させる場合には、
右自衛隊員に対する安全配慮義務として、
車両の整備を十全ならしめて車両自体から生ずべき危険を防止し、
車両の運転者としてその任に適する技能を有する者を選任し、かつ、
当該車両を運転する上で特に必要な安全上の注意を与えて
車両の運行から生ずる危険を防止すべき義務を負うが、
運転者において道路交通法その他の法令に基づいて
当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、
右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、
右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから
運転者として乗車する場合であっても、
右履行補助者に運転者としての右のような運転上の
注意義務違反があったからといって、
国の安全配慮義務違反があったものとすることは
できないものというべきである。
本件事故は、D一尉が車両の運転者として、
道路交通法上当然に負うべきものとされる
通常の注意義務を怠ったことにより
発生したものであることが明らかであって、
他に国の安全配慮義務の不履行の点は認め難いから、
国の安全配慮義務違反はないとした原審の判断は、
正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない
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