「公正ナル会計慣行」と取締役の責任

(平成20年7月18日最高裁)

事件番号  平成17(あ)1716

 

この裁判では、

「公正ナル会計慣行」と取締役の責任について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

資産査定通達等によって補充される改正後の決算経理基準は,

金融機関がその判断において

的確な資産査定を行うべきことが強調されたこともあって,

以下に述べるとおり,大枠の指針を示す定性的なもので,

その具体的適用は必ずしも明確となっておらず,取り分け,

別途9年事務連絡が発出されたことなどからもうかがえるように,

いわゆる母体行主義を背景として,一般取引先とは異なる

会計処理が認められていた関連ノンバンク等に対する

貸出金についての資産査定に関しては,具体性や定量性に乏しく,

実際の資産査定が容易ではないと認められる上,

資産査定通達等によって補充される改正後の決算経理基準が

関連ノンバンク等に対する貸出金についてまで

同基準に従った資産査定を厳格に求めるものであるか否か自体も

明確ではなかったことが認められる。

 

資産査定通達等によって補充される改正後の決算経理基準は,

特に関連ノンバンク等に対する貸出金についての資産査定に関しては,

新たな基準として直ちに適用するには,

明確性に乏しかったと認められる上,本件当時,

関連ノンバンク等に対する貸出金についての資産査定に関し,

従来のいわゆる税法基準の考え方による処理を排除して

厳格に前記改正後の決算経理基準に従うべきことも

必ずしも明確であったとはいえず,過渡的な状況にあったといえ,

そのような状況のもとでは,

これまで「公正ナル会計慣行」として

行われていた税法基準の考え方によって

関連ノンバンク等に対する貸出金についての

資産査定を行うことをもって,

これが資産査定通達等の示す方向性から

逸脱するものであったとしても,

直ちに違法であったということはできない

 

そうすると,長銀の本件決算処理は

「公正ナル会計慣行」に反する違法なものとはいえないから,

本件有価証券報告書の提出及び配当につき,

被告人らに対し,虚偽記載有価証券報告書提出罪及び

違法配当罪の成立を認めた第1審判決及びこれを是認した原判決は,

事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものであって,

破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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