株券が発行されていない株式に対する強制執行の手続
(平成30年4月18日最高裁)
事件番号 平成29(許)13
この裁判では、
株券が発行されていない株式(振替株式を除く。)に対する
強制執行の手続において配当表記載の
債権者の配当額に相当する金銭が供託され,
その供託金の支払委託がされるまでに債務者が
破産手続開始の決定を受けた場合には,
当該強制執行の手続につき,破産法42条2項本文の適用があるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
株券が発行されていない株式に対する強制執行の手続において,
当該株式につき売却命令による売却がされた後,
配当表記載の債権者の配当額について配当異議の訴えが
提起されたために上記配当額に
相当する金銭の供託がされた場合において,
その供託の事由が消滅して供託金の支払委託がされるまでに
債務者が破産手続開始の決定を受けたときは,
当該強制執行の手続につき,破産法42条2項本文の
適用があるものと解するのが相当である。
その理由は,以下のとおりである。
破産法42条2項本文は,破産手続開始の決定があった場合には,
破産債権に基づき破産財団に属する財産に対して
既にされている強制執行の手続は,破産財団に対しては
その効力を失う旨を規定するところ,
上記決定当時,既に強制執行が終了しているときは,
同項本文の適用はない。
株券が発行されていない株式に対する強制執行の手続においては,
執行裁判所は,当該株式につき売却命令による売却がされた場合,
配当等を実施しなければならないとされている
(民事執行法167条1項,166条1項2号)。
そして,配当表記載の債権者の配当額について
配当異議の訴えが提起されたために上記配当額に相当する
金銭の供託がされた場合において,その供託の事由が消滅したときは,
裁判所書記官が供託金について配当等の実施としての支払委託を
行うことが予定されているのであって
(民事執行法167条1項,166条2項,91条1項7号,
92条1項,民事執行規則145条,61条,供託規則30条1項),
上記供託金は,上記支払委託がされるまでは,
配当等を受けるべき債権者に帰属していないということができる。
そうすると,この場合における上記強制執行の手続は,
売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時にはもとより,
その後も上記支払委託がされるまでは終了しておらず,
それまでの間に債務者が破産手続開始の決定を受けたときは,
破産法42条2項本文の適用があるものと解することができる。
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